第518話 江戸ソバリエの心髄

     

今年も江戸蕎麦について語ってきた。
①江戸蕎麦切初見は神田地区にあった常明寺!
②日本における最初の蕎麦屋は江戸の日本橋・浅草!
③蕎麦切の美学は粋にあり!
④日本の蕎麦は、中国・三江生まれの江戸育ち!
こうした場合、やはり江戸蕎麦にそれにふさわしい舞台の方が現実感が出るというものだ。
その点、この秋は記憶に残る講演の機会に恵まれたことを嬉しく思っている。
たとえば、神田ワテラスでは「江戸における蕎麦切初見とされている常明寺は神田昌平橋界隈にあった」と語り、日本橋北詰商店街おもてなしフェアでは日本橋「利久庵」の三代目とのトークショウで、「外食店としての蕎麦屋は江戸の中心地日本橋や、観光地の浅草で登場した」とお話した。
また、食の美味しさというのは、一般的には七つの味の美味しさを基準とするが、お蕎麦は〝腰〟や〝喉越し〟など物理的美味しさや、食べる際の恰好良さ=〝粋〟に重きをおいた。つまり「蕎麦切」は江戸の「歌舞伎」「浮世絵」などとならんで町人の文化となったのである。
そのことを歌舞伎座で講演する機会に恵まれたことも喜ばしいことだった。
さらには、北京市における講演では「日本の蕎麦は、中国・三江生まれの江戸育ち!」をお話した。中国の人は栽培ソバが中国発祥である誇りと、その蕎麦を完成させたのは日本であることを認めている。
江戸蕎麦の神髄は江戸ソバリエの心髄でもある。
それをふまえて、これから江戸蕎麦は世界に対してどう向かうべきかを考えたいものだ。

〔文 ☆ 江戸ソバリエ協会 ほしひかる
写真:日本橋北詰商店街おもてなしフェア・トークショウ