第601話 北京・貴州紀行6
2019/12/02
~ ひさかたの大宇宙 ~
貴州では、どこにでも小さな瓢箪がおみやげとして売られている。
聞くところによると、瓢箪は苗族(現代では貴州省に多く住んでいる)のお守であるらしい。なぜお守になったかというと、布依族(現代では貴州省南部に多く住んでいる)や景頗族(雲南省西部に多く住んでいる)でも、宇宙は瓢箪の形をしているという世界観があったらしい。苗族も同様んなのだろう。
しかしそれをまるで秀吉の千成瓢箪迷信ではないかと笑ってはいけない。なぜなら古代日本でもそう信じられていた向きがある。
『万葉集』を開いてみよう。
「天土の 初の時 ひさかたの 天の河原に 八百万千万神の神集ひ 集ひ座して 神分ち 分ちし時に 天照らす 日女の尊 天をば知らしめすと 葦原の 瑞穂の国を 天地の 寄り合ひの極 知らしめす・・・」
中高校時代を思い出していただければ、「ひさかた」とは「天」の枕詞であったはずである。その「ひさかた」とは、民俗学者柳田国男によれば瓢(ひさご)の形という意味らしい。
そんなところから瓢を通して、中国南方と倭国のつながりが見えてくるのだが・・・。
話は飛ぶが、過日、地球から5500万光年の距離にあるおとめ座銀河団の楕円銀河M87の中心に位置する巨大ブラックホールの撮影に成功したというニュースが流れていたが、大宇宙をつつむその空間のそのまた空間が瓢形をしていないとはだれも言い切れない・・・!
〔文 ☆ 江戸ソバリエ北京プロジェクト ほしひかる〕