健康ニュース 5月15日号 数字が意味するものは?

     

健康をテーマにして講演を頻繁にやっておられる方の話を聴く機会がありました。入場料を払い演壇近くの席でメモを取りながらの拝聴です。客席はテーマが「高齢者と健康管理」ということもあってほとんどがご年配の方です。

詳細な講演内容についてここで述べるつもりはありません。疑問に思ったことを質問し、講師の返答について書いてみます。

講師は「健康のためには、よく噛んで食事をすることが大切。まぁ一口30回咀嚼すればいうことないです。徳川家康も一口に30回噛んでいたということです」と言っていました。

この件に関して私の質問は「徳川家康は、豆腐なども好物のようでしたが、豆腐も30回噛むのですか?30回噛むという根拠について教えてください」

講師「豆腐は常識的に30回も噛めないでしょう。玄米、魚、豆類などは良く噛んでいたようですね」

会場では私の質問に、「何を馬鹿なことを言っているのだ、豆腐を30回も噛むことなんて・・・」という全員アウェーの冷たい雰囲気が漂っているのを感じ取りました。

30回咀嚼するということは健康講演や健康手引書などでよく見かけます。その真意を理解しないとダメな気がしてなりません。30回咀嚼するということがなぜ言われているのでしょうか。

昔は固い食べ物が多かったというのは現代人の勝手な解釈と考えます。昔だって固くない食べ物がたくさんあったはずです。

この30回咀嚼説を徹底的に考えてみました。

日本咀嚼学会が公表している文献やレポートを見ても、食品素材などによって咀嚼回数が異なることは、当然のことと多く発表されています。

ではなぜ一口30回と言われたのでしょうか。

30という数字に意味がある、という考えに至りました。「3」の意味するところは・・・?

古来わが国では日常生活に数字を用いて、生活を楽しむ傾向がありました。

「3」は「ミッツ」とも言い、「ミッツ」は「満つ(ミツ)」と同音です。「満つ」には「十分に」という意味があります。従って「30回噛む」という意味は、本当に30回咀嚼するということではなく、「十分に噛みましょう」という意味である、という解釈にたどり着きましたが、異議がありますでしょうか?

我が国の先人は、このように生活の中に数字を上手く使って生活にリズムをつけていたのでしょう。

例えば御三家、三大公園などの「三」は、魂、精神、肉体の三つが完ぺきという意味で、立派なという意味で使われています。

東京タワーが昭和33年に完成し、その高さが333メートルということも、昔を見習って、縁起を担いだのかも知れませんね。

さらに「七転び八起き」という言葉があります。これは当時の人々にとって「七」と「八」は、数が多いということを意味しています。したがって「何度失敗しても立ち上がって・・・」という意味と考えて良いでしょう。

日本咀嚼学会がアンケートを取った結果、多くの方から「30回も噛むと味が分からなくなって食事が美味しくなかった」という声があったとのことですが、当然かもしれません。「講師たる者、裏付け無くして語ることなかれ」を肝に銘じたいです。