第648話 そばのはな さいたひ

      2020/07/22  

☆そばのはな さいたひ

ある文を書くうえで、この地球の上には人間だけではなく動植物も自然も同じ乗組員の《地球船》だという考え方を勉強する必要があったので、いろんな本に目を通していた。そのとき、たまたまこの絵本に出会った。内容はコピーもメモもしていなかったけど、だいたいこんな話だったと思う。

ひとりぼっちの子うさぎさんは、蕎麦畑の隅で赤ちゃんにお乳をあげながら、子守唄を歌っているお母さんに出会います。「お母さんって、いいな~♪
次の日から子うさぎさんは、子守唄を聞きに、畑へ毎日出かけていきました
ところが、ある日、山ので大きな音がして、土煙が上がりました。

人間がダムを作っているんだと、鳥たちが騒いでいました。
「そんな~ ⁉⁉ 優しいお母さんと同じ人間、山を崩すなんて・・・
工事の音は日増しに激しくなり、蕎麦の実を刈り取ったお母さんは山を急いで下りて行きました。その時、赤ちゃんの帽子を落としてしまったのです。

子うさぎさんは、赤ちゃんの帽子を届けてあげようと蕎麦畑を走っていきました。その途中、ドッカーン!! 子うさぎさんは吹き飛ばされてしまいました。

子うさぎさんは月まで飛んで行ったのでしょうか・・・。

まさに、人間(母子)、動物(うさぎ・鳥たち)、植物(蕎麦)、そして自然が描かれ、そして月が登場するだけあって、地球船のイメージであった。幼児向けの短い絵本の文章ながら、胸にジンときた。

☆「悪夢のような政権」

安倍氏と小池氏の政治手法は似ているところがあるといわれる。すなわちCM型の政治である。①目立つ言葉を捻り出し、②何回も繰り返して使い、③それをマスコミ全社が繰り返し報道する。たとえば「アベノミクス」「骨太の方針」「安倍一強といわれる」「丁寧な説明」「悪夢のような民主党政権」・・・。これを毎日毎日TV各社が流してくれる。CM代の要らないCMのように。

ニュースを素直に聞いてくれるのは、失礼ながらだいたい二流の国民である。二流の人々は「テレビであのレストランは美味しいと言っているから、美味しいはずだ」と信じてくれる。だからニュースもそのまま受け取ってくれる。でも一流は信じない、自分の舌で判断するからだ。また三流も関心がない。腹一杯食えれば、味なんでどうでもいいからだ。しかし政治家にとってはそれでいい。なぜならマーケット理論からいえば二流が一番多数だから、支持層は獲得できる。その結果、アンケートをとれば「他の内閣よりよさそうだから」と回答数が一番多い。「他の内閣」とは何なのか?「よさそう」というのは何が良いのか?と問えば、めんどくさそうなお顔をなされる。

しかし、経済誌によれば、民主党政権時代と安倍政権時代は、前者の経済成長率は1.8%、安倍政権のコロナ以前でも1.0%、GDPも安倍政権になって落ち込んでいるという。これでは「アベノムサク」のために「他の内閣より悪い」「悪夢の安倍政権」ということになる。

☆今こそ「新しい政治様式」を

今コロナ禍でも無策ぶりが露呈した。代わりに西村コロナ大臣は国民に「新しい生活様式」という名の我慢生活を強いてきた。というよりか国民に責任も求めてきた。「今はWith コロナだ」という理由付けで。

歴史を知っている人なら、ウンザリしたはずだ。昭和15年ごろ、「今はWith 戦時下だ」という理由付けで、政府(大政翼賛会)は「新生活体制(写真)を強制したことがある。だからWith コロナ? コロナ撲滅の間違いではないですか? With肺病、With ペストなんてありえないでしょう。肺病撲滅、ペスト撲滅が政治家の仕事ではないですか? と思うし、何と情けない政治家たちだたろうとがっかりする。おまけにそれをまたマスコミは「新しい生活」、「新しい日常」だと宣伝する。その協力ぶりまで戦前とまったく同じだ。

幕末の佐賀藩に10代藩主鍋島直正という人がいた。そのころ日本では天然痘が流行していた。そこで直正はワクチンをオランダから取り寄せるよう命じ、1849年佐賀城で3歳の息子(後の11代藩主直大)に接種し、成功した。の成功によってワクチン佐賀藩内そして全国に普及していったが、わずか三歳のわが息子に日本で初めて人体実験をやらせた勇気と英断が国を救ったたわけである。(写真)

政治家の仕事は国民を救うこと。国民に我慢を強いることは間違いだ。そこでコロナ大臣にお返ししたい。「今こそ新しい政治様式を

余談だが、台湾の蔡英文総統の下でコロナ対策で結果を出した公衆衛学者の陳建仁副総統は、一段落したとき一線を退いてまた研究者に戻ったが、そのときの退職金7500万円は辞退したという。日本ではK検事が退職金6000万円をしっかり頂いたころだった。

☆明日の日本

冒頭の『そばのはな さいたひ』をいろんな人にすすめたところ、読んで感銘したとのメールをいただいた。だが、秦野市の石井絵里子さんはすでに「娘に買ってあげています」とのことだった。そこで私も、「そうか」と思って、孫とお隣の子にプレゼントした。

そんなある日、テレビニュースを観ていた。 保育園の保育士さんが、二、三歳のひよこのような幼児が隣の児と仲良くしようとしたら、保育士さんたちは「ほら、密になったらいけませんよ」と言って引き離している。遊びと引き離しの格闘だったが、それを観て私は涙が出そうになった。何という非人間的な日常だと。おそらく、安倍さんも、小池さんも、西村さんも、絵本を見たこともないだろうし、園児のことを真剣に見つめてこともないだろう。だから、この非人間的で緊急処置の状態を「新しい日常」などと、うそぶくことができるのだろうと思ったりした。

将来(あるいは子ども)が見えない政治家は失格である。政治家は、この児たちのために、日本の将来のために働かなければならない。そのうえで今政府のやることは、コロナの終息=感染症撲滅、すなわち治療薬の開発支援である。現在期待されているのは、1.ステロイド、 2.BTK阻害剤、 3.SARS COV-2抗体医薬、 4.プサン、 5.間葉系幹細胞療法、 6.弱毒化ワクチンなどである。国は全力でバツクアップすべきだ。

新薬を開発できる能力をもつ国は世界で5~10ケ国しかないだろう。その中にギリギリ日本も入っていたはずである。しかし間違ったジェネリック政策によって日本の開発力は危なくなってきた。

今までの経済至上主義と技術開発の結果、地球温暖化を招致してしまった。それゆえに世界中で感染症が問題になってくるという。だったら保健医療政策が世界を救う。日本はまだ間に合うから、その先頭に立って世界を救ってほしいものだ。

〔文☆エッセイスト ほしひかる

写真:佐賀城内鍋島家の種痘(絵葉書より)・戦前政府の新生活運動(WEBより)