エバラ「既存の麹より酵素力が高い液体麹」独自開発
執筆者:motoe
エバラ食品工業(本社:神奈川県横浜市、代表取締役社長:森村剛士)は、既存の麹よりたんぱく質を分解する酵素(プロテアーゼ)の力価が高い新規液体麹の開発および工業化に成功。この液体麹の開発により、たんぱく質を主成分とする肉や魚などを発酵させた新機軸の調味料を製造することが可能になるという。同社が開発した新規液体麹は、プロテアーゼ力価がみそ用米麹と比べて約 2.4 倍高く、肉や魚などたんぱく質を主成分とする原料の発酵が可能。今回の研究では、麹菌を特定の培養液(特許出願中)や条件下で培養することで、プロテアーゼ力価が高い液体麹を作る技術を開発し、工業化に成功した。現在、発酵食品に使われる酒用麹やみそ用麹など、麹のほとんどは、米や大豆などの穀物を使って培養された固体麹です。発酵に必要な十分な酵素力価を得られる一方で、衛生管理が難しく、熟練の技術を必要とするといった特徴があるが、液体麹は、水に栄養成分を加えて作る液体培地の中で麹菌を培養したもので、一般的に、発酵食品の製造に用いられることは少ないものの、雑菌が入らない環境で培養するため工業化に適している。しかし、固体麹と比べると酵素力価が低いことがこれまでの課題となっていたが、同社では、新規原料開発を検討するなかで、衛生管理がしやすく工業化に適した液体麹に着目し、5 年前から研究を進めてきたという。今後、同社は、秋田県に技術提供をし、新たな発酵食品の商品化に協力する意向。一般的な固体麹を使って肉を発酵させると、しょうゆやみそのような味わいになり、肉が持つ風味とうまみを感じにくいが、同社が開発した液体麹を使えば、肉の特徴を生かした発酵食品を生産することが可能となる。雪深い秋田県では、昔から食品を長期保存するため「発酵文化」が根付いており、みそやしょうゆ、漬物、しょっつる(魚醤)などの発酵食品が豊富にあり、また、短角牛や比内地鶏、ハタハタといった特産品も多く存在していることから、秋田県の発酵技術と同社の液体麹技術を用いて、秋田県の特産品を使用した発酵食品の商品化を進めるとともに、肉の低利用部位を活用して食品ロスの削減や、地域経済の支援など、社会課題の解決にも貢献していきたいとしている。