新書紹介「新・みんなの蕎麦文化入門」ほしひかる

      2021/04/20   執筆者:編集部

日本蕎麦について歴史、道具、食べ方まで事詳しく記した「新・みんなの蕎麦文化入門」が3月29日、アグネ承風社から出版された。著者は江戸ソバリエ協会理事長ほしひかる氏である。ほしひかる氏はサラリーマン生活を終えた後、蕎麦好きがたたってか、それとも何かの縁か、人生の後半を蕎麦の普及と研究に歩み続けている。ほし氏が江戸ソバリエ協会を立ち上げ、認定講座を始めた頃、果たしてこの講座に人が集まるのかと心配したものの、たちまち、全国の蕎麦好きが集まり、これまでに延べ2000名の認定者を世に送り出している。

同書の前半は蕎麦の歴史についてまとめ上げている。よくぞここまで調べ上げた、というのが実感である。蕎麦の専門書があるのかどうか、知らないが「たかが蕎麦」(本当はたかが蕎麦ではない)にこれだけ精力を注いでいるのかと改めて感心した。同書の中で「蕎麦打ちは粘土細工と同じ、食べる粘土細工である」というくだりは面白い。街角で、蕎麦打ち実演をよく見かけるが、旨そうだな、と思うのが関の山で、それ以上考えも及ばなかった。その姿はまさしく陶芸家の粘土を煉る姿、そのものである。「たかが蕎麦ではないか」と口をすべらすと100%、怒られる。普段、何気なく食べている蕎麦、これからは心して蕎麦を食べることにする。定価2420円(税込み)、201頁、発行所アグネ承風社、2021年3月29日第1刷。なお、フードボイスにほしひかる「蕎麦談義」連載中。