第753話《オリーブオイル蕎麦の膳》

      2021/11/24  

   小松庵銀座店において《オリーブオイル蕎麦の膳》の会が催された。
   過日、小松圭子さんによるオリーブオイルのお話があったことから、そのときご紹介された「DAZERO」を使用したお蕎麦の創作料理のご披露というわけであるが、「世界の東京」の、その中心地である銀座において、新しい蕎麦料理の挑戦がおこなわれていることが、うれしい。料理を担当されたのは当店の料理長小池智之さん、御献立は次のとおりだった。

御献立
一、温蕎麦
  かけsoba
二、前菜
     クリームチーズと佃煮の最中
     鴨の生ハムとラフランス
    柿とスモーク豆富の白和え
三、東京蕎麦
     焼き茄子と蕎麦粉のポタージュ
四、変わり蕎麦
      青大豆味噌とオリーブオイル
五、冷蕎麦
      生粉打ちせいろ
六、甘味
      無花果のコンポート
     蕎麦パンのチョコレートラスク

 ほとんどの料理に「DAZERO」が使われていた。
 小松圭子さん一押しは、《青大豆味噌》、これとオリーブオイルはよく合うとおっしゃる。
   私が驚いたのは《クリームチーズと佃煮の最中》、これは菓子だろうか、料理だろうかと思いながら、口にした。摩訶不思議に美味だった。

  さて、問題のオリーブオイルとお蕎麦の組み合わせはどうだろう。
  その前に頭に入れておかなければならないことがある。
  世界的には麺類は《汁なし麺》と《汁あり麺》がある。ところが、現在の日本蕎麦は涼性の《せいろ蕎麦、ざる蕎麦》と温性の《かけ蕎麦》とに分けられる。
  《汁なし麺》というのは料理的には「和え物」にちかいかもしれないが、実は《せいろ蕎麦、ざる蕎麦》《かけ蕎麦》が出現する以前の日本では、蕎麦などの麺は和えて食べていた。「和え物」というのは『古事記』にも登場する最古の、伝統料理だから、日本の蕎麦は《せいろ蕎麦、ざる蕎麦》《かけ蕎麦》《和え蕎麦》を供することが可能である。小池さんの御献立にもそれが揃っていた。

  一、〔温蕎麦〕  かけsoba 
  四、〔和え蕎麦〕 青大豆味噌とオリーブオイル
 五、〔冷蕎麦〕  生粉打ちせいろ

 このなかのどういう形のお蕎麦がオリーブオイルとマッチとしていたか?

 私は、一 の〔温蕎麦〕と、四の〔和え蕎麦〕が好みに思えた。
 〔温蕎麦〕にオイルが合うことは、蕎麦界の二大温蕎麦ともいえる《天麩羅蕎麦》や《鴨なん》で実証されている。〔和え蕎麦〕は今でいえばオリーブオイルドレッシング流であるから、これも料理界では実証済みである。
   残る〔冷蕎麦〕にはどうか、ということになる。私は冷たい汁にオイルは合わないと思っている。その点、小池さんは少量で、多種の汁を用意してくれている。オリーブオイル、塩、胡麻垂れ、一般的蕎麦つゆの四種である。つまり多様性を楽しんでほしいてというわけだこれならいいと思う。

  以上は、個人的な声である。皆さんはどうだったろうか? ソバリエとしてはアンケートでも、とりたかったところである。

参考: 第748話 お蕎麦とオリーブオイル - ほしひかるの蕎麦談義 - フードボイス (fv1.jp)         

 〔江戸ソバリエ認定委員長 ほし☆ひかる〕