キリン「AI活用の仕込・酵母計画システム」試験運用

      執筆者:motoe

キリンビール(社長:磯崎功典)は、NTTデータ(社長:本間洋)と共同でビール類を製造する「仕込」・「発酵」工程において、AIを活用して最適な仕込・酵母計画を自動で立案するシステムを開発。同システムは段階的な導入を経て、2021年10月時点で全9工場での試験運用を開始した。試験運用を経て、「仕込・酵母計画業務」における確実な熟練技術の伝承と、全9工場合計で年間1,000時間以上の時間創出を見込み、2022年1月より本システムの本格運用を開始する予定だ。キリンビールは、2019年から段階的に運用を始めた「濾過計画」の自動化に加え、仕込・酵母計画にもシステム導入したことで、ビール類を醸造する計画業務全てにおいてAI導入が実現。これにより、濾過計画、仕込・酵母計画合計で4,000時間以上の時間の創出を見込むという。ビール類に対するニーズが多様化する中で、消費者が求める商品を届けるために、キリンビールでは本社・各工場が連携して商品の製造計画を立案するが、ビール類の原材料を仕込み、発酵する工程の「仕込・酵母計画業務」は熟練者の知見に頼る複雑な作業となる。さまざまな条件を勘案しながら立案するため、作業に時間がかかり、技術伝承が難しい業務の一つでもある。今回導入した仕込・酵母計画システムは、2020年12月より全9工場で導入した濾過計画システムをベースに、NTTデータと共同して各工場熟練者へヒアリングを行うことでさまざまな制約を洗い出し、制約プログラミング技術を活用することで、熟練者の知見を顕在化させ、標準化したものとなる。NTTデータは、同システムに関する業務・システム要件の整理や、制約プログラミングエンジンの開発・チューニングなどを実施。今回、熟練技術者のノウハウが取り込まれたシステムの導入により、「仕込・酵母計画業務」の属人化を防ぎ、熟練技術の伝承を実現。また、業務の効率化によりシステム導入前に比べて全9工場合計で年間1,000時間以上の時間創出が見込まれる。各工場では、創出された時間でさらなる品質向上に向けた取り組みや、若手の育成など人にしかできない価値創造を行うことで、「働きがい改革」のさらなる推進とより高い品質管理レベルの製造体制が期待できるとしている。