第769話《金柑切り》+《江戸城濠大根》
2022/01/28
時々江戸料理研究家の福田先生と昼食をご一緒させてもらう。
だいたいは私からお誘いするが、今日は先生の方からお電話を頂いた。ご一緒する店は近くの小倉庵(江戸ソバリエの店)、先生のお宅から5分、私の住まいから10分の所にある。
今日は変わり蕎麦の《金柑切り》と天麩羅を戴くことにした。《金柑切り》はご覧のとおり鮮やかな金柑色。これをオレンジ色と言ってしまっては金柑に失礼だろう。
そういえば、最近は「橙色」とか「桃色」とかはあまり使わなくなり、「オレンジ」とか「ピンク」と言うのが一般的になった。しかし、日本人は「橙色=オレンジ色」「桃色=ピンク色」のつもりでカタカナ語を使用しているが、実は日本人が思い浮かべる「橙色」と欧米人が思い浮かべる「オレンジ色」は違うというのが色彩の専門家の意見である。それはそれとして、日本人が「オレンジ色」と言うようになってから、日本人の「橙色」観に欧米流の「オレンジ色」が入ってきているという指摘があるらしい。言葉、文字というのは物事の概念をも変えてしまうのかもしれない。
話を戻して、二日前に辛味大根の《江戸城濠大根》を預けていたから、店主の安藤さんはそれをすり下ろして付けてくれた。よかった。実は、今日ならまだ《江戸城濠大根》があるだろうとふんで、福田先生に食べてほしかったのである。
さっそく、福田先生に背景をお話すると、先生は《金柑切り》の上に大根下ろしを散らしはじめた。辛味大根は水分が少ないから、その景色は金柑色の麺に雪が降り積もったようになって、きれいだった。私は驚いた。ひとつは、大根下ろしはつゆに入れるものとばかり思っていたことと、辛味大根は《田舎蕎麦》が合い、《江戸蕎麦》には合わないと思っていたからである。
そして、先生は「辛味もちょうどいいし、美味しいよ」とおっしゃった。
さっそくながら、辛味大根の試食を依頼してきたJAの方に報告しなくてはと思った。
それから二人はなんやかんやと食について話し、いつものように解散したのは3時過ぎだった。
〔江戸ソバリエ ほし☆ひかる〕