第785話 下関・川棚温泉名物《瓦そば》を楽しむ

     

 北川育子さん(江戸ソバリエ)が「《瓦そば》を楽しむ会」をやりませんか。
  と声をかけてくれたので、内藤さんと私が、kita ike chojuan(江戸ソバリエの店)に駆けつけた。鉄板はchojuanが用意し、蕎麦と具などすべてを北川さんが持って来てくれた。
 《瓦そば》というのは下関市の川棚温泉の名物になっているから、耳にしたことはあるけれど実際に食べたことのある人は少ないだろう。私もそうだから楽しみだ。
  やり方は、写真のように鉄板に油を塗って茶そばを焼き始める。同時に錦糸玉子、牛肉、葱をのせ、海苔を振りかけて、さらに焼く。その一方で檸檬の上に大根と唐辛子を下ろしたものをのせておく。食べるときはこれを薬味にする。
 《瓦そば》は、下関市の川棚温泉の旅館「たかせ」が開発したものが元祖と言われている。当時の「たかせ旅館」の主は、明治のころ宮﨑・熊本辺りの野外で瓦を今の鉄板代わりにして牛肉を焼いて食べていたという話を聞いて、それをヒントに開発したのだという。昭和36年のことだったらしい。
  私が妄想するに、宮﨑・熊本の牛肉の瓦焼きは、《すき焼き》の野外版だったのではと思っている。

  鉄板焼、鍋物、バーベキューは、「楽しい共食のベスト3」といわれている。
  たしかに一つの鉄板・鍋・火を囲んだ食事は楽しい。
  バーベキューは人類が火で料理をすることを知った太古の人間が、大きな獲物を狩ったあと、みんなで肉を焼いて分け合って食べた料理の流れである。それが現在の肉食系人種に受け継がれている。
  一方の鍋物は、縄文時代の古日本人が土器で煮炊きしてきた料理の流れである。それが日本人の鍋料理に引き継がれている。これが二大共食料理だと思う。
  ところがそこへ第三の鉄板焼が入ってきた。明治の《すき焼き》、大正の《もんじゃ焼き》、昭和の《お好み焼き》である。これもワイワイと楽しい食事会である。
  だから《すき焼き》からヒントを得ただろう《瓦そば》の会も楽しい。
   江戸ソバリエとしては蕎麦を焼くなんてと、驚きである。しかも北川さんのおすすめは焦げたお蕎麦だという。食べてみると、なるほど美味しい。焦げたパンや焦げた魚なんか誰も口にしないというのに、ご飯の、麺類の、お焦げはどうして美味しいのだろう。不思議なことだと妙なところに感心してしまった。

                                           〔江戸ソバリエ ほし☆ひかる〕