健康ニュース 5月15日号 食品添加物はダメ?

     

十年以上前、ある大手スーパーの野菜売り場で経験したことです。もやしが3~4種類陳列されているコーナーでは、1袋が10円ほど高いにもかかわらず、ある業者のもやしをかごに入れている人が多いのに気づきました。確認したところ、1袋の容量はほとんど大差ありませんが、多くの人がかごに入れているもやしには「漂白剤不使用」と目立つような表示がありました。きっとこの表示を見て消費者はかごに入れているのでしょう。

店員に「他のもやしは漂白剤を使っているのですか?」と質問したところ「責任者に確認してきます」と言い、売り場から去って行きました。店員は、生鮮野菜は漂白、着色をしてはいけないということを知らなかったのでしょう。売り場のもやしは全て無漂白ということを買い物客が知っていれば、わざわざ10円高いもやしを買うのでしょうか?

消費者庁に「食品添加物に関して不使用表示を見直そう」という動きがあります。

詳しくは、無添加だから体に優しいと消費者が判断してしまうような表示を止めようということです。

消費者庁では、「無添加を強調する表示は、食品添加物全てが危険であるかのような誤解を招きかねない」として警鐘を鳴らしています。

遵守事項に、「加工食品は全て使用した食品添加物を記載しなくてはならない」というのがあります。商品パッケージの枠内には多くの食品添加物が記載されているのを見たことがあるでしょう。しかし枠外には目立つように、先述のもやしのように、漂白剤不使用などが表示されている例も数多く見られます。過去の代表的な例としては、パンでの乳化剤不使用とか、菓子類では人工甘味料不使用や保存料不使用というように枚挙に暇がないほどです。

考えたいことは、目立つよう表示したことで、売り上げが上がったという商品も数多くあるという現実です。

これは裏を返せば消費者が、食品添加物に対して関心が深く、保存料などの不使用が、安心となり健康にプラスであるということを根強く持ち続けていることの証とも言えます。

この状態がいつまでも続いて良いのでしょうか?

問題点を列記してみます。

2019年には大手製パン会社で、乳化剤不使用の表示問題が発生しました。確かに食品添加物としての乳化剤は使われていないものの、同類の成分が含まれていた問題。また生鮮野菜に「漂白剤は不使用」と表示してあったが、殺菌剤として次亜塩素酸を使用の例。業者は、消費者が次亜塩素酸の作用、殺菌作用と漂白作用の両方を持っていることを理解していない、と考えているのでしょうか。漂白剤として次亜塩素酸を不使用でも殺菌剤としてそれを使っていれば同じであることは、業者ならば百も承知しているはずです。これほど消費者を馬鹿にした話はないと思いませんか! 

これらの問題は、全て無添加食品は安全で健康的であるという消費者の誤解から生じていると考えます。

我が国の食品添加物は、厳しい諸々のテストの結果安全性が立証された物のみが、使用基準内で配合されていることを十分に理解しておきたいものです。

また製造業者側にも、消費者が誤解を招くような表示などは止めるべきで、表示義務のある欄外に、人工甘味料不使用とか防腐剤不使用などの列記はその例です。これらの表示は、消費者が購入の際の参考としている例が多いというデータもあります。消費者は、輸入品も含めて国内で販売されている飲食物に防腐剤は使われていないということと防腐剤を使用した飲食物は違反であることを理解していません。

飲食物を購入の際、表示を見る習慣は素晴らしいことですが、正しく表示を読むための情報収集も重要なポイントです。 

*参考:2022年3月30日、消費者庁は「食品添加物不使用表示についてのガイドライン」を発表しました。