健康ニュース 8月15日号 認知症患者、日本は多い?

     

 医師ではありませんが、TVや週刊誌といったメディアの世界で、認知症について語っていることを見かけることの多い方の講演を聴いてきました。

 結論から書いてみますと講師の主張は以下の点です。

*2025年の日本では、高齢者の5人に1人が認知症となり、その数は700万人を超す。

*WHO発表によると、2018年現在、世界の認知症高齢者は5000万人を超えているが、そのうち500万人は日本人である。

*なぜ日本ではこれほど認知症が増えたのかについて究明が急がれる。

 ほとんどが発表されているデータをもとに話され、講師の考えについては全く話されませんでした。

 講演終了後、気の置けない勉強会仲間と忌憚ない意見交換をしましたが、一致したことは「発表に使われた資料について講師がどういう考えであるかということを聴きたかった」ということです。

 第一の点は、「世界の認知症者5000万人のうち500万人が日本人」ということでした。いくら日本が世界トップクラスの長寿国とはいえこの数値をすんなりと受け入れることは判断ミスを招きかねません。

 講師が使ったデータをどう読むべきなのでしょうか。主な疑問点は次の2点です。

⓵認知症診断基準は世界共通としても、認知症と断定する医師の診断レベルは同じと言えるのでしょうか?我が国のような認知症専門医が各国にはどれぐらいいるのでしょうか?

②認知症の疑いのある人が、国民皆保険の我が国と同じレベルで、すぐに医師の診断を受けられているといえるのでしょうか?

 新型コロナウイルスによる感染者数は、同じ条件のもとで、各国の発症患者数を把握し、流行している国か否かを判断する、ということが世界各国の常識となっています。ほかの疫病でも同じことが言えます。

 当然のことながら世界の認知症患者数に関しても、同一の条件の下で判断しなければ意味がありません。

 わが国での場合を考えてみます。

 同居の高齢者の認知状態に家族が異常を感じたら、すぐに専門医に駆けつけることでしょう。その診断結果は

国内の異なる地域の専門医に診てもらっても、ほぼ同じ結果となることは疑いの余地もありません。

 したがって先述の、日本人の認知症患者が500万人という数値については、当然のことながら異論がありません。

 他の国ではどうなのでしょうか?まず、認知症発症年齢まで生存する高齢者が、わが国に比べて少ないことが考えられます。

次に考えられることは、万が一認知症では?という家族が出た場合、すぐに専門医に診てもらえる環境なのでしょうか?国民皆保険制度でない場合、受診できない人も相当数に上がることでしょう。また認知症専門医は身近にいるのでしょうか?

世界の国々の認知症患者数を比較するならば、同一の条件下でなければ意味がないはずです。聴講者のこうした疑問に答えぬ講演内容は、ただ認知症になりたくないという気持ちや恐怖心を一段と強くさせるだけです。

認知症は高齢者にとって最も関心のある健康問題です。高齢者と称される年齢層はますます増え続けるのは間違いありません。

わが国で認知症が増えている要因として「認知症患者の死亡率低下」というレポートがあります。認知症患者のケア体制が整ったことなどが要因と考えられています。さらに高齢者増加ということを配慮した時、統計の取り方によっては、認知症患者は減り始めているというレポートもあります。

認知症に関して忌憚ない意見交換ができる環境は、さらに充実し身近なものとなるべきです!