健康ニュース 10月15日号 野菜摂取量の最新情報

     

 9月9日付読売新聞に、大きな見出しで「野菜と果物、長生き効果・大規模調査・国立がんセンター」という記事がありました。要旨は国立がんセンターと横浜市立大のチームが1995年(一部は1998年)に40~69歳の男女約9万5千人を対象に食事に対するアンケート調査を実施。その後の20年間を追跡したという記事内容。

 2021年1月1日の弊誌579号では、「野菜のあれこれについて」というテーマで、「野菜を1日に350g摂ろう、と言われていますが、野菜をどれぐらい摂ると健康に良いかという根拠はありません。考えられるのは、2000年当時、脳卒中や心臓疾患で亡くなる方が多く、対策としてカリウム摂取を増やすべきということになり、当時の平均的野菜摂取量から逆算し、350g摂取という目標ができあがった」という主旨の記事をお届けしたことがあります。

 今回の国立がんセンターの発表は、同センターのホームページによりますと、日本の大規模コホート研究においての調査とありました。

 コホート研究とは、特定の条件なし、例えば運動制限とか減塩をするなど条件を付けることがないのが特徴です。そして観察調査は10年とか20年、時には数十年にも及ぶこともあるという長期にわたる調査です。その大規模コホート研究の結果、「野菜・果物摂取と死亡リスクとの関連について」の発表が先述の記事です。

 もう少し詳しく記載してみます。発表のポイントとして

*果物・野菜摂取量が少ないグループに比べ、果物摂取量が多いグループ、野菜摂取量が多いグループでは全死亡率が低いことが分かりました。しかし、摂取量が多いほどリスクが下がるという結果ではありませんでした。

*男性では、果物摂取が多いと呼吸器死亡のハザード比が低い。(ハザード=危険という意味で良いと考えます)

*女性では、果物摂取が多いと心血管死亡のハザード比が低いという傾向を認めた。

*野菜摂取量の男女別解析では、統計学的には優位ではないですが、摂取量の多いグループで全死亡のハザード比が低い傾向を認めた。

 考慮したい点は、我が国では食事バランスガイドで、1日350gの野菜摂取と200g程度の果物摂取が推奨されています。また第2次健康日本21でも1日350g以上の野菜摂取が目標とされています。

 その結果、多くの国民は野菜や果物摂取は多ければ多いほど健康増進に役立つという誤解が浸透している気配があるのではないでしょうか。

今回の発表によって、野菜などの摂取量が多いほど疾病となるリスクが減るという幻想を捨てるべきであり、週刊誌などのメディアも勇気をもってオピニオンリーダーとなるべきと考えます。 

またレポートは、この調査から適正量を正確に推定することは困難としながらも諸々のデータから推定しますと、長生きするためには野菜は300g以上、果物は140g以上摂取することが望ましいとあります。そして具体的に、「例えば、野菜300gは、トマト1個とキュウリ1本、果物140gはバナナ1.5本程度に相当する」と新聞記事は結んでいます。

 野菜と果物摂取に関しては「こんなにたくさん食べることが出来ない」という声をよく耳にしましたが、これぐらいの量ならば・・・と考え直す方が多くなりそうな気がします。生活に密着したコホート研究結果、今後は多くの関係性を報道するものと思います。そして少なくなった野菜の摂取量も脚光を浴びることでしょう。

参考:2022年9月9日読売新聞記事及び国立がん研究センターHP