第815話 幻の碁石茶と、未来の茶の実ジェノベーゼ

      2022/11/07  

+限界突破 生姜

 宮本学さん(江戸ソバリエ&日本茶アンバサダー)から、松屋銀座で開催されている「番茶フェスティバル」に誘われた。
 案内書には下記のお茶が出店しているとあったが、そのなかに、昔から気になっている「碁石茶」が出店していたので、行ってみた。
 ・宮﨑茶房「三年番茶」 
 ・高知県大豊町「碁石茶」
 ・美作市「美作番茶」
 ・奈良県嘉兵衛本舗「天日干番茶」
 ・静岡市「宿場の番茶」
 ・静岡市駄農園「」釜煎り番茶」

 高知の「碁石茶」は、徳島の「阿波茶」とともに発酵茶である。おそらく唐時代のお茶「団茶」の名残であると思う。
 日本のお茶は、大きく言えば、平安時代に唐から「団茶」→鎌倉時代に宋から「抹茶」→江戸時代に明から「煎茶」が渡来してきたが、平安時代の団茶が今も生きているというわけである。だから「幻のお茶」とよばれている。 
 作り方は、1)茶葉を蒸した後、蓆を敷いて約1週間拡げておいて、黴付けして発酵させる。2)それから数週間ほど桶に漬け込む。「黴付け」と「漬け込み」を経てると植物乳酸菌が生まれる。3)発酵が終わり固まった茶葉は3~4㎝に切り分けて蓆に並べ、、約3日天日で干すとのだいう。

 会場には、もうひとつ気になる物があった。
  それが狭山茶の「茶の実ジェノベーゼ」であった。
  茶の実も油を抽出できると聞いていたので、味わってみたいと買ってみた。
  帰宅してから、植木鉢で育てている内藤唐辛子入りのパスタを作り、それに茶の実ジェノベーゼを和えてみた。ペペロンチーノ様の辛味と、アンチョビ様の鹹味のある美味しいパスタができ上がった。
  イタリア料理のコンセプトは、少ない国産の食材を使って、料理を工夫するところにある。
  これまで、「資源の少ないわが国は輸入に頼らさせるを得ない」を常套文句に輸入中心の政策を打ってきた日本の政財界は、考え方を変えなければならないことは昨今の世界情勢から当然である。
  そこに「茶の実ジェノベーゼ」があった。
  日本のお茶というのは、栄西以来、花を咲かせないように栽培してきた。それも日本の伝統的宝であるが、この「茶の実ジェノベーゼ」は、その考え方を変えて茶の実を利用しているわけだ。未来の姿が垣間見えたようだと思いながらパスタと、食後に碁石茶を楽しんだ。

  碁石茶は淹れるとまず色がきれいだ。口に含むと優しい気品がある。それが少し冷めるとほのかな酸味がする。珈琲でいうならハワイコナだろう。
  一服喫した瞬間が、「気になるお茶」が、今日から「お気に入りのお茶」の一つになった時であった。

  舞台は変わるが、二日前に日本橋の「農村BASE食堂」で昼食をとった。
  頂いたのは、林幸子先生(江戸ソバリエ協会理事)が監修した《限界突破ショウガ焼き肉丼》だった。高知県の大豊町産の「限界突破生姜」を使った焼き肉丼だったが、三日をおかずして大豊町産のお茶と生姜を頂くとは、と不思議に巡り合わせを面白く思ったが、いずれも貴重な国産食材にちがいなかった。

〔江戸ソバリエ ほし☆ひかる〕