健康ニュース11月1日号 「腹八分」を考えると・・・
隣家のインテリ夫人「近所まで来ましたのでお寄りしました。お変わり無いですか?」
隠居中の大御所 暈穀菜「おーっ、いい時に来たね。質問だが、『腹八分に医者いらず』という諺を聞いたことがあるだろう?どんな意味だと思っているかな・・・」
隣家のインテリ夫人「腹八分に・・・。お腹いっぱいまで食べ続けたら病気になるから、八分ぐらいで止めましょう、という意味ではないですか?」
隠居中の大御所 暈穀菜「ではお腹一杯は腹何分だと思っているかな?」
隣家のインテリ夫人「腹何分ですって?腹十分ですか?」
隠居中の大御所 暈穀菜「そうだよね。違う言葉で言うと、満腹という言い方があるよね。ではもうこれ以上は食べられませんという状態は何というのかな?」
隣家のインテリ夫人「・・・?腹百分?違いますよね・・・」
隠居中の大御所 暈穀菜「腹十二分と言っているのだよ」
隣家のインテリ夫人「腹十二分ですって?聞いたことないですね。先生が勝手に言っているのではないですか?」
隠居中の大御所 暈穀菜「『腹八分で医者いらず』という諺は多くの人が知っているが、この続きの言葉はあまり知られていないようだ。この続きは。『腹十二分で医者足らず』というのだよ。満腹になってもまだ食べ続けると、いずれ病気になる者が続出し医者が足りなくなるという警鐘だね。今でも、十二分にいただきました、ということもあるよね」
隣家のインテリ夫人「そうですね。ごちそうさまでした、もう十二分に堪能しましたのでこれ以上はいただけません,と言ったこともありますわ。質問して良いですか?腹八分は多くの方が知っていると思いますが、何故腹十二分というのがあまり知られていないのですか?」
隠居中の大御所 暈穀菜「おや、どうしたのかな?嵐にならなければいいが。素晴らしい質問だよ」
隣家のインテリ夫人「分からないならそれでも良いですよ・・・」
隠居中の大御所 暈穀菜「明確な学説などはないよ。ただ洋の東西を問わず十二は、尊い数字とされており、腹十二分は数を表すものと考えない方が良いね。満腹(十分)以上に食べようとすることだね」
隣家のインテリ夫人「数値ではないのですか?理解し兼ねますね」
隠居中の大御所 暈穀菜「分かりやすい例を挙げると、古代の尊い女性が来ていた十二単という着物。これは着物十二枚を意味していない。たくさんの着物という意味だ」
隣家のインテリ夫人「なるほどね。また質問ですが、なぜ腹十二分は広がらなかったのでしょうか?」
隠居中の大御所 暈穀菜「本当に今日はどうしたのかい?良い質問だね。腹八分が広まった江戸時代、日照りや天変地異で食料不足が定期的に発生していた。餓死者が多く発生したのも史実として残っているから知っているだろう。もうこれ以上は食べられないという腹十二分は、治世者としても知られたくない言葉だったことは疑いのないことだね。腹十分だって満たせないのに、腹十二分というその上の状態は庶民にとって夢のまた夢。だから腹十分も十二分も閉じ込められたのだろうね。そうだ、届いたピザパイを肴にビールを飲みながら話そう。腹いっぱいになるだろ!」