第915話 蕎麦界の将来が楽しみ

      2024/09/07  

 ソバリエの店の北池袋長寿庵さんに誘われて、K県の蕎麦組合の勉強会に参加した。その日のテーマは「年越蕎麦」、講師は小平市のK蕎麦店
  国民的にも、そして蕎麦店的にも、年越蕎麦は大事な行事食。だからこそ真摯に対処することが、日本の蕎麦文化を守ることであり、蕎麦業界にとっても大事であるという認識のうえでのテーマ設定だった。
 なにしろ、年越蕎麦つまり大晦日は平常月の3~5倍の売上があるといわれている。そんななか、講師のK店の年越蕎麦は当店平常月の15倍の売上を上げているという。その方法は店内食を廃止して、年越蕎麦セットの店頭販売一本に絞ったかららしい。
 この店頭販売に絞ったということに驚いたが、私たちも何となく気付いていた。平常月の3~5倍という数字の意味は、平常の蕎麦好きのお客さんの3~5倍は行事食のお客さんということになる。そして行事食というのは、店ではなく家で、家族と共に食べたいものである。だから、テイクアウトが通用したのである。
 2番目に驚いたことは、今日の勉強会は講師の一方的な講演ではなく、全員参加型であることである。
 つまり、チラシを配付する範囲、蕎麦麺を入れる容器、蕎麦麺の淹れ方つゆ入れ容器、茹で方を書いたメモ、海老天の揚げ方、大きさなど・・・について意見や質問が跡を絶たないのだった。

  この熱気は、後の懇親会になっても燃え続けていた。なので乾杯の音頭を依頼された小生も、つい「日本の蕎麦に乾杯」と発したくらいだった。
 このあとも楽しかった。江戸ソバリエ宣言の「粋な仲間と楽しくやろう」を上回っていた。
 なかでもNさんが、蕎麦の美味しい時季は二度ある。一つは秋の新蕎麦、二つは冬の成熟蕎麦。このことを多くの人に認識してほしい。そうすれば、人々は二度、おいしい蕎麦を食べられる、と言う。
 たしかに、冬の蕎麦はおいしいという人がいる。ただしそれを科学的に証明した人はまだいないと思う。Nさんは何とかしたいと熱く語る。
 それを聞いて私は、この人たちがいる限り、蕎麦界の将来は楽しみだと思った。

 写真:一緒に参加したの松本行雄様と。 さすがは蕎麦屋さんを応援する会の代表だけあって大人気。

※〝三立て〟に対して、「熟成蕎麦」がおいしいという見方もある。

江戸ソバリエ協会
ほし☆ひかる