第336話 SOBA&NOODLE

     

蕎麦畠 ☆ ほし絵

ある所で、海外からの留学生に【蕎麦】の食べ方を話してきた。
相手は、中国、タイ、カンボジア、フランス、ロシア、USA(カルフォルニア)、フィジーの国からの留学生。
面白いことに、麺文化のない欧米には蕎麦文化があり、麺文化のあるアジアには蕎麦麺が一般的でないところが不思議だ。
そもそも、①麺類は古代中国において工夫され、②ソバは中国大陸の四川・雲南が源泉地である。
だから、①アジアでは麺文化圏が形成されたが、それは欧米までは及ばなかった。②その代わり、ソバという穀物(!)はヨーロッパ大陸へ伝わり、それがアメリカ大陸まで飛んで行ったようだ。

中国の麺文化、蕎麦文化については、この「談義」でも繰返し述べてきた。そ
の中国の麺文化は周辺の国々に影響を及ぼし、タイも、カンボジアも、ライスヌードルの【クイティアオ】【クイティウ】を食している。
ヨーロッパでは、フランスに【ガレット】と、ロシアに【カーシャ】があることは、蕎麦好きな人は知ってることだろう。
そして、アメリカであるが、フォスターの有名な曲「Oh Susanna」の歌詞には蕎麦粉のパンケーキが出てくるから、意外である。
De buckwheat cake was in her mouf,de tear was in her eye♪
(彼女は【蕎麦粉のパンケーキ】を銜えて、目には涙が溜まっていた♪)
この歌は1848年ごろゴールドラッシュに沸くカルフォルニア辺りで歌われたというから、蕎麦粉を食べていたことが分かる。
最後の、フィジーには蕎麦文化も、麺文化もない、主食はイモ類であるという。タロイモ、サツマイモ、ジャガイモ、ヤムイモなど・・・。
実は、世界のイモ文化を追及していくのも面白いのであるが、それはまた別の機会に譲るとして、フィジーの留学生は言っていた。「日本のお米は美味しい、おかずがなくても食べられる。」と。

さて、今日のメインの「蕎麦の食べ方」はどうだったかいうと、箸はもう世界に認められた道具だから、皆さん上手に使われる。ただ日本の場合は、「箸を付ける」とか、「箸がすすまない」とか、食事の気持を表現するくらい「箸」に対して敬愛心をもっているが、ナイフ・フォーク・スプーンはそこまではいたってないようだ。
だから、食事の初終には「頂きます」「ご馳走さま」を言うことと、使った箸はきちっと揃えて置くことと、食べ物は残さずきれいに食べることを申上げたところ、興味をもってきっちり守っていただいた。
ところが、食事の前の姿勢の話では、①脚を組まない、②肘を着かない、と言ったところ、「なぜ?」という質問を頂いた。
これは座敷、銘々膳、和服などの和風文化によるものだから、なかなか説明は難しいが、少しだけ話したところ何となく関心をもっていただいたようだ。
それから【江戸蕎麦】につきものの、というより日本人なら当たり前の〝コシ〟と〝喉越し〟については伝えることが難解だから、話さないことにしている。というのは、これまで外国人に〝アルデンテ〟などと言っても、なかなか通用しなかったからである。ほんとうは〝コシ〟は「かん水」を使うことを知った中国人の発見なんだろうが、その理由までは理解されないようだ。
最後の、麺は空気と一緒に吸い込んで食べることを言ったら、皆さん笑っていた。
ともあれ、日本の麺文化は世界の麺文化の中でも特異な存在だ、と蕎麦を通して思うことがある。それがNIPPONというところのようだ。

〔江戸ソバリエ認定委員長 ☆ ほしひかる