健康ニュース 8月15日号 事前の話し合いと認知症

     

160809家族 アルツハイマー型認知症の特性例としてよくいわれることは、すでに食事は終えているのに、何度もご飯はまだか、と言ってくるということがあります。どんな手引き書を見ても、また相談員に聞いても、アルツハイマーの特性だからといわれるケースが多いようです。専門の先生は、「こんな時、患者の言っていることを否定するのはマイナスだけである。何故なら患者は食べたこと自体を忘れているのだから。忘れていることを責めても何にもならないだけではなく、患者には悪い感情だけ残り逆効果を生みかねない」と言っています。

 ではこんな時はどう対処すべきでしょうか。患者の病気の進行状態や環境によっても様々なやり方があるようです。たとえば、「ごめんね、炊飯器のスイッチを入れるのを忘れていたの。私っておバカさんね。許してね」と笑顔で言うと、患者も笑顔でうなずくケースがあるという。また「今、大急ぎでしたくしているからもう少しだけ待っていてね。テレビでも見ていて」というのも良いそうで、患者もゆったりとした気持ちになることが多いらしい。家族や周りにこのような会話はありませんか。専門家はこのような症状を行動・心理症状(BPSD)と言っています。BPSDは前述のような周囲の対応によっては改善が期待できる場合もあるとのことです。

 認知症をテーマにしたある健康講演会で、参加者の体験発表談が大変参考になると思いますので記述します。ある高齢のA婦人は、息子夫婦と同居。まだ心身とも健康状態は良好。ある年のお正月休みに息子の兄弟姉妹が集まった席でのこと。Aさんは次のように言いました。「皆に聞いて欲しい。私はまだ元気です。しかしいつか急に老化が進み、認知症になってしまうかもしれません。認知症になったら、B子さん(息子の嫁さん)が私の財布からお金を盗んだ、とみんなの前で、時には誰かに電話をして言うかもしれません。でも、そんなことを私が言ったら、私の認知症の症状が進んだのだなと思ってね。これは妄想という症状なのです。絶対に、間違ってもB子さんを疑うことのないようにしてね」この言葉を聞きB子さんは義母の深い愛情を感じたとのことです。世間では、一番世話をしている家族が、一番長く患者の周りにいるために、認知症特有の妄想の受け手となってしまい、持って行き場のないストレスを感じることが多くあるようです。

 この話には落語のような落ちもあります。「もし息子が私の財布から勝手にお金を持ち出した、と言った時は限りなく本当だと思って良いからね」と言ったとのことです。世の男性諸氏、ゆめゆめこのようなことを言われないようにしようではありませんか。

 本年6月末の総務省発表によると、昨年の国勢調査では全都道府県で65歳以上の高齢者が、15歳未満の子供人口を上回ったとのことです。敬老の日前後、新聞・TVといったメディアは高齢化社会についてどんな提言があるのでしょうか。千に一つでも期待したい気もしますが、「高齢化が一層進む」といった分かり切ったことだけであるならば、高齢化社会への展望を持っていない!といえます。