外食烈伝「その根底に流れるもの」(六歩)

      2016/09/27   執筆者:編集部

〈展開期〉その③

前述したが、専門店の味が各地方に進出し、そこが地元のファミリーレストランとして認知され、子供から大人まで巻き込んでの新しい食堂・レストランの息吹となっている。また同様に和風FFの展開で、たこ焼き・お好み焼きが人気となり、大手スーパーのフードコートをはじめとし、全国的な規模での大きなうねり・進展となっていることも見逃せない。この背景には、あくまでも日本の外食は「食文化足り得るもの」でなければならないという不文律が挙げられる。やはり日本的な土壌に根差す日本の外食は、和風の味わいを根幹とし、庶民の中での成長でなければ発展しないことを物語っている。

角度を変えて食味感覚から飲料(アルコール・ソフトドリンク)動向を見てみよう。これは小生が、東大の医者に取材して聞いたもの。

〈幼児期〉=甘いものが主体(甘味)

〈青年期〉=酸っぱいものが主体(酸味)

〈熟年期〉=苦いものが主体(苦味)

〈老年期〉=甘いものに戻る(甘味)

この順番で味覚は推移していく。途中には、辛い・しょっぱい・エスニックなどの味覚があるが、根本の味では次項で書く四つの味覚が中心と言える。まず味覚の推移では。子供の時代は「甘味」、そして青年期は「酸味」、さらに壮年期は「苦味」となり、老年期は「甘味」に戻ると言われる。この味覚の変遷は人によって、また時代によっての違いが多少あるかも知れないが、おおよそは当たっている。ソフトドリンクで見ると、子供時代はジュース・ネクターなど、甘いものを好んで飲んでいる。次いで青年期は、ブルガリアヨーグルト・スポーツドリンクなど酸味系が好まれている。働き盛りの壮年期は、コーヒー・紅茶・ウーロン茶・緑茶など苦味を好んで飲んでいる。今の日本の現状がこの時期と言える。社会で働いている人たちは、どこに言っても大多数の人はコーヒーをブラックで飲み、紅茶や緑茶・ウーロン茶など、ひいては水までも味わい豊かに飲んでいる。続いてこれから日本で始まる老年期(もう始まっているが)は、「甘味」に戻る傾向が表れてきている。甘いネクターの復活然り、さらにアミノサプリやファイバードリンク、オリゴ糖他、甘いものに戻る時代となっている。あちこちのスーパーではあずきの「ぼたもち」が人気となっているのも事実。余談だが、昔から一貫して味の追求をしている井村屋の「ゆであずき」や超人気の「あずきバー」は子供から老人までこよなく愛されている。

これは料理の世界にも当てはまる。和食・洋食に限らず、コース料理は甘い食前酒から始まり、酸味系のサラダ、メインディッシュには苦味のある料理があり、最後の〆にはフルーツやアイスクリームの甘味・食後酒となる。

翻って、アルコールの変遷を見ても同じことが言える。昭和30~40年代は、日本酒やカクテル・トロピカルフルーツドリンクなど、根底には「甘味」があった。次いで50年代は「酸味」に移行。ハイサワー・レモンサワーなどの時代となった。さらに60年代から平成年代になると「苦味」が背景となり、ビール、ワインの流れから、乙類焼酎などの本格焼酎が全盛。各料飲店やバー・クラブ・スナックに至るまでまんべんなく浸透していった。焼酎の変遷も面白いものがあり、庶民派の「ホッピー」に始まり、甲類焼酎のハイサワー・レモンサワー・グレープフルーツサワーから、乙類焼酎に移行、その中でも、麦焼酎からそば焼酎、米焼酎、さらに芋焼酎にバトンが渡されている。この焼酎の流れにも「甘味・酸味・苦味・甘味」の連続性がある。最終ランナーの芋焼酎の底辺には「甘味」があるこは言うまでもなく、続いての「泡盛」の後味にも甘味があるのだ。この輪廻は今後もさらに移行していくと言える。

そして現在進行形が同じ蒸留酒仲間の「ウイスキー」で、焼酎のホワイトスピリッツ時代から、次にバトンを受けるのはブラウンスピリッツの「ウイスキー」になる。元に戻って恐縮だが、昭和30~40年代の日本酒から、サワーに移行、ビール・ワインから焼酎、味覚の変遷でウイスキーになり、最近の傾向では日本酒が脚光を浴び始めている。これを見ると、昔から言われている「十年ひと昔」が当てはまり、ソフトドリンクもアルコール類の変遷も、十年経てば元に戻ると言うこと。その解答は「自明の理」で、十年刻みで戻ることから三十年我慢していれば、もとの時代に戻れるということで「待てば回路の日よりかな」である。各メーカーも新商品の開発もさることながら、原点の商品に注力していくべきとも言えるのではないか。最後に四つの変遷から「甘味➡酸味➡苦味➡甘味➡➡棺桶」(かんみ=さんみ=にがみ=かんみ=かんおけ)が人間の輪廻である。