食の食(2) インド・ダージリン有機紅茶 9/7(火)
執筆者:編集部2
インド・ダージリン有機紅茶。そこには持続可能な理想的なエコビレッジがあった。
20年来の知人のインド人(日本で実業家として活動。インド会の代表的人物)の紹介で9月上旬ダージリンを訪れる機会をえた。
ニューデリーから国内線で2時間、インド東部のバグドグラ空港へ。さらにジープで3時間。山岳のデコボコ道。切り立った傾斜面にそった細い山道を前後左右に激しくゆられ真っ青になりフラフラでダージリン村へつく。
ここはイギリス植民地時代の避暑地で標高2100メートル、ヒマラヤの山麓に位置し、遠く白い岸壁が続く高峰にひときわ高い世界第3のカンチェンジュンガの勇姿がみえる。
1999年にはヒマラヤ鉄道「トイ・トレイン」が世界遺産に登録になり、人気を集めている。目指す茶園はさらに高地で標高2500メートルに位置していた。訪れたのは雨期が終わりに近づく頃で、朝霧が濃く発生するが昼頃にはすっかり晴れ、強い日射が茶葉を照らす。昼夜の気温差が大きく葉の成長に好条件、葉は大気から水分を吸収するため、新芽の発生が多く、養分がたくさん含まれた香、味を引き出す上質の葉へと成長していく。
ダージリンの紅茶は「紅茶のシャンパン」といわれ、世界で最も高級の紅茶として独特の芳香をもち、評価されている。春一番摘みの淡い香りのファーストフラッシュ、夏前のセカンドフラッシュ、この中にわずか5%しかないといわれるフルーツのような芳醇な香り、味のあるマスカットフレーバーがとれる。さらに10月頃に濃い味わいのミルクティーなどにいいオータムナムが生産される。このダージリンには茶葉を摘む時期、茶葉の部位、製茶の方法、茶畑の場所、環境、茶園などさまざまな要素ごとに香、味、雰囲気が異なり紅茶の楽しみが存在する。そこで世界から高値でも注目されている絶品である。
ダージリンには多くの茶園があり、それらはいくつかの企業が固有の茶園を経営し、運営管理している。茶園に働く労働者は茶摘み(女性)、環境整備、製茶工場など村の人全員が紅茶の産業に何らかの形で従事している。まさに茶園がコミュニティを形成している。ここの多くの茶園は有機農法を実施している。土壌を有機でつくり、茶樹の育成栽培にも農薬を一切使わず、完全なオーガニック体制をとっている。
その結果、茶葉は健全に育ち、労働者の健康も保たれ、土壌は永久に活性していく。ともすると便利、簡単、急速、手間かけずを求める化学肥料、農薬の活用だが、効率的に思われるが、結果不利益を生じている。
ここの茶園コミュニティは自然環境の原点を守り、手間と時間をかけ、自然のリズムに従って、しかも楽しく、ゆっくり、余裕の生活を繰り返している。その結果、紅茶としての商品、品質が評価され、企業は高収益を得、それを村全ての雇用にあて、さらにフェアトレード制を採用。収益の一部を常に地域へ還元している。道路、通信のインフラや学校建設、教科書、運営費、病院、福祉、公共施設等コミュニティ経費に充当している。全てのはじまりが自然を守ることからスタートし、村コミュニティが幸せになる構図をつくっている。ニューデリーなど都市部の下層階級の人々の顔と比べると天国にいるような笑顔の村の人たち。日本のよう一極集中、その結果、過疎、高齢になり村の存続の危機がせまる。田舎地帯と比べるとなんと理想的なことだろうか。
帰国の前にニューデリーでインドスローフードの代表で、世界的な環境保護の運動家、哲学者、物理学者のヴァンダナ・シヴァ女史に会った。
彼女は1984年インドの緑の革命の後、たった1人で健全な在来の種を守る運動をはじめ、農家から種を集め、農家へ配る運動や有機農法の大切さを学ぶ学校をつくり、農家1人1人へ指導をしていった。今では50万人の農家が有機農作物に参加している。同時に都市の消費者への啓蒙を行い、有機を生産者と消費者をつなぐ活動へと励んでいる。
インド全体の平均賃金は低く、多くの低下級層が貧困に悩まされ食糧事情も決してよくない中、有機運動は大変なギャップがある。しかし先進国と同じ道を通りたくない。発展途上の今だから始めるのだという強い意気込みを感じた。