第907話 もし裁判員

     

 某弁護士事務所のクライアントの例会が後楽園のドームホテルで開かれた。この会は会員誌を発行していて、一時私は編集長を任されていたこともあったが、現在は後輩が担当している。その関係から、今も幹事の末席に座っており、連載しているエッセイ『風の日記』は37番までになった。
 例会はだいたい、講師をお招きしてお話を聴き、その後に懇親会という形である。講演は私も蕎麦についてお話し、また三遊亭圓窓師匠や森由美先生など知り合いの方にお願いしたことがある。
 今日は、同事務所のK弁護士「あなたが裁判員に選ばれたら」という話の予定である。もちろんわれわれ国民が知っておくべきこととしてのテーマ選定であった。
 その前に、弁護士事務所の代表のT先生のご挨拶があった。先生のご挨拶は「お暑い中お運びいただき・・・」、という型通りの文句から始まったが、「昨今、地球はどうなるんでしょうね、という台詞が挨拶言葉になってしまったようです。もはや企業が本気で地球温暖化に抵抗することが必要ではないでしょうか・・・。」
 この「企業は」という意味は、当弁護士事務所のクライアントは会社が主体なので、もはや市民レベルでは手に負えない事態だから、国や企業や、あるいは国連などの世界機関が取り組むべきだという声掛けになるだろう。

 さて、K先生の「あなたが裁判員に選ばれたら」である。
 実例を提示されながら90分にわたって話されたが、要点は次のようなことだろう。
☆裁判員裁判の対象事件
 対象は、死刑、無期懲役、禁固などにあたる重大事件である。
 これが私には納得できない。なぜなら、いかなる事件であろうと人間を死刑だと決めるようなことに素人の身で関わりたくないというのが、正直なことである。
 なぜ重大事件が対象とされるようになったが疑問なのであるが、誰に尋ねても分からないという。謎である。
☆裁判員に選ばれない人
 職業柄などによるが、内訳を聞けば納得できる内容である。
☆裁判員の辞退が認められる場合
 これも病気あるいは客観的に止むを得ない事情などは辞退が認められるらしいが、そのなかの一つに「70歳代の人」は認められるというのがある。私たち世代は助かるが、しかし意外にも思う。
 私は、社会は老・中・青、男・女が平等であるべきと考える。すなわち老年の判断力、中年の現実力・青年の若さ、男性の理性、女性の感性を尊重すべきと。
 その視点から見れば、むしろ70歳代の人たちこそが適正な判断に臨めると思うのだが、辞退してもよいとのこと。
 冒頭の地球温暖化も、昔の地球を知っている70歳代の人たちがもっとも憂うのは当然である。だからT先生のように公の場での声掛けは70歳代の者の務めであると思う。

エッセイスト
ほし☆ひかる