第911話 キングダムⅣ
【第4作目~大将軍の帰還】
今回は映画館で観た。ゆったりとした椅子に、見やすい大型スクリーン。戦記物には打って付けだろう。
始まると、のっけから壮絶な戦いが始まった。こちらは信(山﨑賢人)と羌瘣(清野菜名)。相手はその存在すら隠されていた趙国の総大将龐煖(吉川晃司)。仲間たちは信(山﨑賢人)の突進力に敬意をもつが、化け物とまでは言わなかった。しかし羌瘣(清野菜名)と最初に出会ったとき、今の仲間たちは彼女の見事な剣捌きを化け物とばかりに驚いた。そんな二人が束になっても、自ら「武神」と称する龐煖(吉川晃司)は強い。二人は大きいスクリーンの右や左に吹き飛ばされ、信は瀕死の重症を負った。
一方、宮廷では楊端和(長澤まさみ)が秦王嬴政(吉沢亮)に忠告していた。
楊端和によると、龐煖(吉川晃司)の背後に別の冷血な化け物がいる。そいつは勝つためには何でもやる。北のある小国では10万人もの兵と民が惨殺され、国は消滅、荒野の屍を漁る烏だけしか今はない、と言った。
重臣たちは不安に襲われた。秦王嬴政(吉沢亮)は昌文君(高嶋政宏)に詰問した。王騎(大沢たかお)はこのことを知っているのかと。昌文君は脂汗を流しながら、「おそらく。しかし王騎将軍は戦いは止めますまい。将軍が秦王のために戦っていることは紛れもないことですが、もうひとつ彼は愛の復讐のためにどうしても龐煖(吉川晃司)を倒さなければなりません」と秦王に語り出す。
= その昔、摎(新木優子)という女将軍がいました。摎と王騎(大沢たかお)は子どものころから共に育った幼馴染み。彼女は「お城を100個取ったら王騎様の妻にしてください」と頼み込み、それを叶えるために王騎と肩を並べる将軍へと成長していきました。 そして念願となる100個目の城、馬陽へと攻め込みましたが、そこで龐煖(吉川晃司)と戦って敗れ、殺されたのです。怒り心頭の王騎(大沢たかお)は、龐煖(吉川晃司)と戦って重傷を負わせました。龐煖は久しく山に籠りひたすら武芸に励み、自らを「武神」と名乗るほどになって王騎(大沢たかお)に復讐するために山を下りて来たのです。王騎(大沢たかお)もまた愛する摎(新木優子)を殺された怨みは捨てておりません。=
このことを私(昌文君)が口を閉ざしていたのは、実は摎将軍(新木優子)は昭襄王(草刈正雄)の姫君でありましたゆえ、箝口令が敷かれていたのでございます。
ここで第4の美女新木優子の登場となる。彼女の眼は日本人離れしている。だからこういう多民族が闊歩する大陸の映画には相応しいと思う。
さて、戦いの現場に戻ろう。
信(山﨑賢人)は羌瘣(清野菜名)ら飛信隊の仲間に助けられて命を取り戻し、現場復帰していた。
王騎(大沢たかお)は龐煖(吉川晃司)と一対一の死闘に入るつもりである。その前に副官の騰(要潤)に合図した。これまではいつも将軍の横にいて、「御意」と返事するだけの男だった。それが、沈黙の合図だけですべてを理解した。一対一の対決には周りに敵兵がいては邪魔である。だから大掃除をしておけというわけである。騰(要潤)は数十名の兵を従えて、戦場を突っ走った。すると敵兵がバタバタと倒れていく。あまりにも素早い剣使いのために、敵の眼にはただ騎馬隊が疾走しているだけにしか見えなかった。大将趙荘(山本耕史)も何が起きたか分らぬまま、殺られた。飛信隊の連中もあっけにとられ「化け物だ」と呟いていた。この騰(要潤)も実在の人物である。史上では秦の文官として仕え、生涯を全うした。
いよいよ王騎(大沢たかお)と龐煖(吉川晃司)という巨大怪物の死闘が始まった。大物俳優が、巨大な矛をスクリーンいっぱいに振り回し、突き、払い、斬り、また振り回す。まるで大相撲の横綱どうしが長時間闘って勝負が付かず、何度も取り直して、まだ勝負が付かないような死闘が続く。観客は、いったいどうなるだろう、と思ったそのとき、一本の矢が王騎将軍の背に刺さった。その瞬間、龐煖の矛が王騎将軍の腹を突き刺した。
騰(要潤)と信(山﨑賢人)は瀕死の王騎(大沢たかお)を敵に渡すまいと護衛しながら撤退した。
丘から見ていた趙軍の将が総大将李牧(小栗旬)に提言した。「いま総攻撃すれば勝利します」。しかし李牧は冷たく言い放った。「死に際の獣にかぎって思わぬ力を絞り出す。わが軍は勝利するが犠牲も出る。勝つときは完全勝利しなければならない」と。
一方の虫の息の王騎(大沢たかお)は、軍のことは全て騰(要潤)に任せるといい、自分の愛馬を牽いてくるよう命じた。そして信(山﨑賢人)に自分と一緒に馬に乗れと言い、「馬上から見る景色はどうだ」と若き信に問うた。馬上から将軍が見る景色と、歩兵の見る景色。それは会社でいえば社長の見る景色と、社員が見える景色の違いのようなことを教えていたのであるが、大将軍の愛馬に大将軍と共に乗っていることに感動している信には、大将軍王騎(大沢たかお)が若き獅子に教えようとしている真意がまだ分からなかった。そうしているうちに大陸一の大将軍王騎(大沢たかお)はついに息を引き取った。全兵士が泣いて、打ちひしがれた。そこで信(山﨑賢人)は持ち前の前進力で叫んだ。「てめえら下を向くな、上を向いて堂々と王騎(大沢たかお)様と城へ帰るんだ」。副官騰(要潤)も深く頷いていた。
一方、王騎(大沢たかお)の討ち死が報告された宮廷では、信(山﨑賢人)の叫びに呼応するかのように秦王嬴政(吉沢亮)が命じていた。「正門を開けろ、国をあげて王騎将軍(大沢たかお)を迎えろ!」
原作者は、人との出会いが人間を大きくすることを描いている。【3作目】では商人紫夏(杏)と秦王嬴政(吉沢亮)、【4作目】では王騎大将軍(大沢たかお)と若き獅子信(山﨑賢人)。二人とも死ぬ間際まで、相手のことを考えてくれた人だった。
それでも、秦の中華統一まではまだまだ遠い。いま目前に立ちはだかる趙の化け物李牧(小栗旬)が不気味である。 それに李牧の側近カイネ(佐久間由衣)の真っ直ぐ見る眼も妙に冷静で気になる。
【5作目】の公開は来年だろうか。
新木優子といえば、あるテレビ局の通路で見かけたことがある。すれ違うかと思ったら、その前にスタッフと一緒に部屋に入られた。可愛いかった、美人だった。大騎将軍が復讐したくなるのも分かる。
〔とりあえず完〕
江戸ソバリエ北京ブロジェクト
ほし☆ひかる