第291話 アニメの力

     

イメージ将門 ☆ ほし絵

第8回 神田明神 江戸蕎麦奉納より

神田祭の日の、神田明神(祭神:大己貴命・少彦名命・平将門命)への江戸蕎麦奉納も今年で8回目となった。
毎年、ご提案者の「かんだやぶさんと、江戸流手打蕎麦鵜の会さんと、当江戸ソバリエ協会の共同で行っているが、江戸蕎麦奉納の方は恙無く執り行われた。
ただ、今年は境内の雰囲気に異変が感じられた。というのは、髄神門辺りから境内まで、列がとぐろを巻くように続いているのである。その数1000人以上。年齢は比較的若い人が多い。とはいっても40代50代の方や外国人の姿も見られる。
お蔭で、例年なら蕎麦打場から本殿までお練りをするところ、今年だけは人込を避けながら本殿に向かって歩いた。こんなことは、これまで8年間にはなかった現象である。
これも遷座400年のためであろうかと思ったが、どうもそうではないらしい。答を先にいえば、秋葉原、神田、神保町を舞台とするアニメーションの関連グッズを買い求めるための長蛇だったのである。
そんな人込の中にキャラクターのTシャツを着た男性お二人が熱心に蕎麦打をご覧になっていたので、私は声をかけてみた。
すると、このお二人こそが、今日の神田祭とアニメーションを繋いだお二人だったのである。
アニメの力による今日の行列に驚いていた私は、一緒にいた江戸ソバリエ・ルシック小沢さんのお店「沙羅」(江戸ソバリエ認定の店)へお二人を誘った。

数日後、お二方と小沢さんのお店でお会いしたが、先ず感心したのは共に立派な紳士であることだった。今日まで私のメールに対してもキチンと返信されていたが、お二人の挨拶、話ぶりも人としての礼儀と誠意に満ちていた。これには小沢さんの奥さまも大変感心されていたようだった。
そんなお二方も、マンガや音楽が好きでこの世界に入ったといわれたが、それだけなく日本文化や神社が好きだという。
私も、紙ではなく、板に絵をいたずら描きしているせいか、板絵である絵馬に関心がないでもないが、だいたい見ていると、十二支か、神話か、縁の歴史上の人物などばかりである。そんなところに、今日のようなアニメーションの絵馬なんていうのは今まで見たことがない。
でも、その物語のアニメファンはかなり多いため、立派に人々の支持を受けているということになる。だからそれが絵馬になっても何も可笑しくないということになるのだろう。
そんな思いと、このお二方の誠意が江戸の総鎮守という由緒ある神田神社の心を動かしてアニメの絵馬闖入(失礼!)という革新的な事件までに発展したのではないだろうか。そういえば、一方の神田神社の宮司さんや権宮司さんたちも折紙付きの紳士であるから、なお面白い。

小沢さんのお蕎麦をいただきながら、彼らから、アニメーション界の話をうかがったが、蕎麦界とは異なる世界なので刺激的だった。
お話をうかがっていながら、イラストで描かれたカワイイ絵馬を想い浮かべていると、アニメーション界は主人公たちのキャラクターが重要なのだろうと私は思った。
そういえば、われわれ世代はアニメーションといえば、アメリカ製では「ポパイ」や「トムとジェリー」、国産では「鉄腕アトム」あたりが意識の初めだろう。それらはみな明快なキャラクターだった。それから、多くのアニメーションが流行ってきたことは横目で見ていたが、詳しいことは知らない。それでも、最近のキャラクターはずいぶん変化してきていることだけは何となく分かる。
そして、そのキャラクターが一人歩きして、社会現象化したらシメタものなんだろう♪

われら江戸ソバリエのキャラクター、ミス江戸ソバリエ菜穂子さんも、一人歩きできないかナなんて想いながら、残りの蕎麦を啜った。

参考:ほしひかる筆「神田祭 江戸蕎麦御奉納」(『酒めん肴』08. 7月号)
https://www.youtube.com/watch?v=gtpixtPJBOY

〔江戸ソバリエ認定委員長 ☆ ほしひかる〕