神奈川県生協連「第63回通常総会 木下会長理事」挨拶

      執筆者:編集部

soukai本日は大変お忙しい中を神奈川県生活協同組合連合会第63回通常総会にご出席をいただきましてまことにありがとうございます。
各会員生協の組合員及び役職員の皆さまが、この間、東日本大震災の復旧・復興への支援や神奈川県との協定に基づく「見守り活動」の推進など地域社会に貢献をする日常活動を強化し、また消費税の引き上げをはじめとする厳しい経済環境の中で消費者・組合員のくらしを守るために幅広い活動を力強くすすめてこられたことに心から敬意を表します。また、本日は、神奈川県をはじめ行政、友誼団体のご来賓の皆様方には大変お忙しい中、ご臨席を賜りましてまことにありがとうございます。日ごろより県生協連ならびに会員各生協の活動に対しましてご理解とご指導・ご協力をいただいておりますことに心から御礼を申し上げます。
さて、例年、この県連総会の挨拶におきましては、私は、この1年を振り返り、それぞれの生協が固有の事業と活動を通じて組合員と地域社会の皆さまに貢献することにより、その社会的な役割発揮とともに地域社会からの信頼をよりいただくように前進をしてきたということを申し上げてきましたが、本年は、それらの内容は踏まえた上で、この場でどうしても申し上げたいことがあります。
それは日本の今後の進路と内外政策の根幹にかかわる「憲法9条と集団的自衛権」に関わる諸問題についてであります。
県生協連としては、従来、組合員の普段の暮らしに関わる政治的・経済的諸問題については例えば「食の安全」や「消費税」問題など必要に応じて発言をしてきたところですが、各生協の生い立ちの違いや一致点での活動を重視すること、県内生協の大同団結をはかる立場から、戦争と平和、憲法、安全保障問題といった課題については「核兵器の廃絶・被爆者支援、世界から貧困と飢餓をなくし、子供たちの幸せな未来を願う」という活動を除けば、基本的には慎重なスタンスで、各生協の自主的な取り組みに任せるとともに組合員の間での学習活動の重視と主権者としての市民、組合員の自主的な判断を尊重するという姿勢をとってまいりました。
しかし、最近の「憲法9条と集団的自衛権」に関わる問題は、国民主権を前提とした立憲主義の視点からは、とても容認のできない動きであり、この点については、従来の会長挨拶より踏み込んだ発言をせざるをえないと考えているところであります。
現在の憲法が集団的自衛権の行使を禁止しているという解釈は、50年以上にわたる歴代の政府自身が堅持してきた解釈であり、その変更は、憲法9条の改正をもってしかなしえないとしてきたのは政府自身であります。
それを現安倍内閣は、「国際情勢」の変化を理由として、解釈変更をしようとしているわけです。が、政府の説明は、私自身の認識では到底、理解しがたいことであり、こんなことが許されるとすれば、日本は本当に法治国家なのかという疑問から、あえて本総会の挨拶の中でふれさせていただきたいと考えた次第です。
まずやり方、方法論についてであります。かつて、20世紀、世界で最も民主的といわれたワイマール憲法を持ったドイツが、憲法にはなんら手を加えることなくナチスによる「全権委任法」という法律の制定により、あの狂気のファシズム支配につながった、まさにあの歴史的事実に匹敵するやり方であり暴挙だと思うのです。麻生財務大臣・元総理が
「ナチスのやり方を見習ったらどうか」と以前発言をして物議を醸しましたが、まさにその手口であります。
また、憲法が尊重擁護義務を課しているのは「国務大臣その他の公務員」に対してであって、一般国民に対してではありません。つまり、そもそも憲法というものは、国民の基本的人権を守るために、時の権力者の権力行使に関して、国民主権の立場から権力者に対して、憲法を尊重しその枠内でことを進めるように制約を課しているものであり、50年にわたる一貫した解釈の内容の変更を、憲法の改正ではなく、一内閣の解釈で変更するというのはまさに憲法破壊であります。そして、この憲法改正発議ができるのは政府ではなく、国民と国民の代表者たる国会だけであります。変更が必要か否かという内容論についてはまさに広く国民的議論に付し、国民の主体的意思で判断をすればよいのです。もしこうした解釈改憲が可能になれば、明文上の憲法9条はその存在意味を喪い、実態のない単なる飾り文句になってしまうことは明らかです。
次に、内容論としても、集団的自衛権の本質は「自衛ではなく他を守る他衛権」であります。戦後70年間、世界の中で培ってきた平和主義国家日本が「戦争のできる国、戦争をする国」に進路を大転換するということであり、これこそ安倍首相の言うところの「戦後レジームからの脱却」ということなのかと思わざるをえないのです。集団的自衛権を行使することにより引き起こされる新たなリスク、例えば第三国から「日本を敵とみなす」という評価を受けるデメリット、喪う世界からの信頼、こうしたことへの説明は政府からは全くない異常さを私は恐れます。
自民党の元幹事長の古賀誠さんは、月刊誌「世界」の7月号で、「平和国家という選択への敬意を」と題して、「集団的自衛権の行使」に対して警鐘をならし、「戦後70年間の平和という国際的にみても稀有といえる実績は、先人・先達がたとえ難しい状況が出てきても、憲法の平和主義ということに重きを置いて積み上げてきたことからもたらされた何にも代えがたい結果だということを深く認識して欲しい」と述べておられます。
私は、国民主権と立憲主義の立場から、現在の政府の動きについては強い危機感をもって反対の気持ちを申し上げたく、その立場を明らかにし、奔総会にご参加の皆さまがたにも、多面的な視点から広く深くお考えいただくことをお願いしたいと思います。
挨拶が長くなりました。まとめに、現在の「くらしの危機と不安の増大」ともいえる組合員をめぐる状況に対して生協は、自らの力量を高めながら「協同の力でくらしの中に安心を取り戻していく」主体者として成長をし続けていくことが大変重要な課題であります。
生協が社会から求められる役割と責任を果たしていくためには、消費者・組合員や地域のニーズに寄り添った生協らしい事業と活動を通じて、持続可能な強い経営構造と体質を創りあげていかなければなりません。決して簡単な課題ではありませんが、組合員のために組合員とともに地域社会の期待に応えられる生協づくりに、共に邁進していきたいと思います。
本日の県連総会の成功とご出席の皆様の生協の発展を心から願って開会のご挨拶とさせていただきます。どうぞよろしくお願いをいたします。