<コンビ二創業戦記・別伝>「DCVS回想録」第22回
2017/01/24
「懐かしのローソン東富士ゲストハウス時代(1994~2002)」(その3)
<「開講講義」と「ウエルカムパーテイ」>
「開講講義」
先ずは、『BMC研修』・第一日の「開講講義」と「ウエルカムパーテイ」について触れたい。
加盟店研修生の皆さんは、ゲストハウス到着後、各自の部屋にチェックインして暫くくつろいだ後、全員で教室に集合し、研修の第一日目が始まる。
私は、緊張した面持ちで集まる皆さん一人一人を教室入り口で、「ご苦労さまです」と出迎え、室内へ案内した。
BMC研修では、研修オリエンテーションに先立ち、概ね次のような趣旨の歓迎の言葉を述べた。
<開講講義する筆者>
【館長の鈴木でございます。今後の末永いお付き合いを宜しくお願いいたします。
本日は、新しいローソンの仲間、「ローソン同志」の皆さんをお迎えして本当に嬉しく、皆さんを熱烈歓迎申しあげます。
そして、皆さんのローソン経営への勇気ある選択と決断に、深く敬意を表し、皆さんの「ローソン商人人生」の新しい出発を心から祝福いたします。
私たちローソンは、世のため人のために役立つ、コンビニエンスストア事業展開を通じて、21世紀を切り拓く新時代の商人集団でありたいと念願しています。
ローソンは、
第一に、志ある商人集団、
第二に、科学的商人集団、
第三に、社会的責任を果たす商人集団、を目指しています。
21世紀を目前にして、日本の商業構造は大きな変革期を迎えていますが、その中で今まさに、「コンビ二が主役」「フランチャイズが主役」の時代が始まっていると思います。
今やコンビ二は、
①・常に変化する時代の要請、市場のニーズに対して、
最も柔軟に適応する商売であり、
②・組織と個人、大と小の共存共栄を実現する
最適の商売であり、
③・夫婦を中心に家族が一致協力できる
一家和楽の商売であり、
④・誠実の努力すれば必ず成果が上がる、
やり甲斐と生き甲斐のある商売であり、
⑤・定年のない生涯現役を貫ける商売であり、
その意味で、時代の最先端を行く商売であります。
ローソンが主張する「『マチのほっとステーション』と『ナショナルチェーン』」戦略は、日本の誇る思想家の一人・比叡山開基の伝教大師・最澄が提唱した《一灯照隅・万灯照国》の精神を、現代の商売において実践することであると確信しております。
『マチのほっとステーション』とは、《一灯照隅》=「それぞれの地域で、一番親切で便利なお店」を実現することであり、
『ナショナルチェーン』とは、そういうお店が全国に1万店集まれば、《万灯照国》=日本全体の国民の暮らしを、明るく照らしていくということであります。
この理想を、フランチャイズチェーンのシステムを見事に活用し、実現していこうというのが、ローソンの基本戦略であります。
フランチャイズチェーンの本質は、「『理念共同体』+『システム共同体』」=『共存共栄共同体』=『役割分担共同事業』であると、考えています。
その意味で、本部と加盟店、また加盟店同志が、お互いに対等なパートナーであり、それぞれ自らの役割と責任を果たし合うことで、共存共栄を実現していけるのであります。
どうか皆さん、この研修を通じて、
第一に、ローソンの志(=理想・戦略・目標)を共有すること、
第二に、ローソンのシステム(=科学的商売の原理と技術)を共有すること、
第三に、ローソンの責任(=フランチャイザーとフランチャイジー・
商人・経営者・市民としての責任)を共有すること、
をお願いいたします。
今皆さんは、お互い同士、今日初めて出会い、全くの見知らぬ他人のように感じておられることと思いますが、この研修が終る頃には、全員が、「ローソン同志」「ローソン商人」「ローソン家族」の一員として、固き絆を結ばれていることは、絶体に間違いありません。
これは確信を持って申し上げておきたいと思います。ご健闘を心からお祈りいたします。】
何しろ研修の参加者は、基本的には初めてコンビ二経営に携われる方々であったから、それぞれの不安を取り除き、自らの選択と決断に、絶体の確信を持って戴くことをめざして、私は毎回、時々の社会情況や業界トピツクスをまじえながら、気迫と熱意を込めてお話するように努めたつもりである。
講義を終えると、私は、研修生一人ひとりの席へ笑顔で歩み寄り、「元気で頑張りましょう」と、しっかりと目を見詰めながら握手し、激励して回るのを常とした。
親しみ易さと安心感を感じてもらうのが狙いであった。
初めは皆さん驚かれるようであったが、次第に表情が和み、笑顔で力強い握手を返してくれたのである。
<第117期BMC研修座席表> <第72期更新前研修座席表>
一方、『更新前研修』の参加者は、オープン以来10年間のコンビ二経営経験を持つヴェテランオーナーさんたちであり、気位と自意識が強く、中には「今更研修なんて」という気持ちがあり、渋々参加されている方も多かったと思う。
私自身、殆どが顔見知りの人たちであったから、ゲストハウスへ到着された時の皆さんの表情からも、それは充分に窺がえることであった。
「お出迎え」と「教室への案内」はBMC研修と全く同様であったが、更新前研修の「開講講義」では、次のように少しトーンを変えたのである。
【皆さんが、この10年、コンビ二経営に筆舌に尽くしがたいご努力とご苦労を重ねてこられたことに、深く敬意を表します。
お陰でローソンは、この国でも有数のコンビ二チェーンに成長して参りました。心から感謝申し上げます。
今日は契約更新前研修にご参加頂き、有難うございます。
でも皆さん、今日は皆さん、本当は嫌々来たんですよね。
『おれたちはもうヴェテランなんだ。何で今更研修なんだ』と。
お顔を見ればよくわかりますよ。けれどもそれは、とんでもない思い違いです。
何故、契約更新前に研修が必要なのか、その理由をお話いたします。
その理由をお聞きになれば、「是非研修に参加したい」「研修に参加できることは、素晴らしい幸運なのだ」と実感され、喜び勇んで、目がらんらんと輝くことになるでしょう。
今、我々は、どんな時代環境にあるのか。
第一に、今我々は、最先端業態のコンビ二経営に携わっているという
最高のチャンスに恵まれていること、
第二に、「コンビ二が主役」の時代は、『業態間競争』を超え、
今や『チェーン競争』から『個店間競争』の時代を迎えていること
第三に、21世紀に向けてITによる情報武装化の急速な進行に、
常に柔軟に適応し続けることが競争に勝つ条件であること
以上の三点を強調したいと思います。
このように急激に変動する時代環境の中では、昨日までを単に延長する商売では、チェーンも、個店も、生き残ることは困難です。
そこで、今回の研修では、二つの基本的な提言をいたします。
提言1・自店の経営の質をもっと高めよう!
「真の地域一番店実現の5宣言作り」で、
「クルー・コミュニケーションの向上策」を、
具体化し、実践しよう!
提言2・自らの経営の質をもっと変えよう!
「家業から企業へ=複数店経営への挑戦」と、
「人材育成策」を具体化し、実践しよう!
であります。
今回の研修では、この二つの提言について、21世紀の商人として、一人の経営者として、お互いの体験、そして智慧と情熱をぶつけ合い、考え合う中で、激動の時代を勝ち抜く為の具体的な方策、商人としての意志、経営者としての意志を、是非とも、皆さん自らが紡ぎだして頂きたいと思います。
私どもは、その手伝いを一生懸命に致します。
必ずや、研修修了時には、『参加して、本当によかった』と、全員が希望に燃えて実感して頂けるものと確信しております。】
熱意をこめて講義を終えると、研修生一人ひとりの席へ歩み寄り,全員と親愛の心を込めて握手させて頂くのはBMC研修と同様であった。
<研修参加オーナーの感謝の手紙>
「ウエルカムパーテイ」
「BMC研修」も、「更新前研修」も、初日のオリエンテーションが終わると、毎回、2階のダイニングルームで研修生の皆さんを歓迎するウエルカムパーテイを開催した。
ウエルカムパーテイは、今日初めて運命的出会いをした者同士が、お食事をしながら、自己紹介を通じて、お互いを知り、気軽に心を開いて、ローソンオーナーとしての同じ志を確認し合う、最初の場であった。
私はこのウエルカムパーテイを、何よりも、「皆さんが感じている新しい挑戦への不安と緊張を少しでも和らげ、お互いが運命的出会いとして強い「同期の桜」の絆を築いて下さる機会にしたいものだ」と念じていた。
BMC 研修はもちろんのこと、更新前研修でも、研修生同士は、地域が違うとお互い初対面の人が殆どであった。
そこで私自身が、研修生一人ひとりについて、よく理解していることが必要と考えた。
ウエルカムパーテイの度ごとに、研修生全員について、それぞれの経歴やローソン経営にかける抱負など幾つかのポイントを、事前に把握することに努めたのである。
パーテイに先立ち、私は笑顔で乾杯挨拶した。
【GOOD EVNING LADIES&GENTLEMEN!
WELCOME TO THE LAWSON HIGASHIFUJI GUESTHAUSE TODAY!
LET' S HAVE A NICE PARTY FROM NOW !
THEN EVRYBODY、 KANPAI!
THANK YOU VERY MUCH 、ENJOY PLEASE!
皆さん、フランチャイズビジネスは,結婚のようなもので、これは披露宴であり、今日は、お互いが初めて運命的な出会いをされたわけであり、新しい親族・同志・戦友になる日であります。
あとで少しお酒が入ったところで、全員でお互い楽しく、自己紹介をやりましょう。
この研修を通じて、お互いを深く知り合い、「竹馬の友」、「同期の桜」となって下さい。
どうか商人として、自分を売り込む積りで、印象的な、楽しい笑いのある、自己紹介をして頂きたいと思います。】
料理は、同じダイエーグループのホテル・セントラーザの調理陣が担当していたから、一流ホテル並みのメニューを楽しむことが出来た。
飲みものはフリードリンクであり、研修生の皆さんも、徐々に緊張がほぐれ、次第に笑い声が上がるようになっていく。
私は、皆さんの自己紹介に合わせて、雰囲気の盛り上げに努めた。
本人が言い忘れたエピソードなどを、私が補足して皆さんに紹介したりした。
すると「エ、どうしてそんなことを知っているんですか」と、みんなの笑い声を誘うことになった。
こうしてウエルカムパーテイは和気藹々のうちに無事進行し、皆さんは翌日からの研修本番に備えることができたのである。
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