健康ニュース 1月15日号 野菜摂取1日350gとは

     

 「健康のためには1日に野菜を350g食べよう」ということは、メディア報道などでよく見聞きされていることと思います。しかしこの情報が出た根拠や、プロセスについて理解されている方はあまり多くないようです。

平成12年から展開されている「健康日本21(21世紀における国民健康づくり運動)」のなかで野菜摂取に関して、1日350gの目標が記されています。その根拠として、平成9年国民栄養調査では国民1人当たりの野菜摂取は292g。当時の生活習慣病として、脳卒中や高血圧症が多かったのですが、これらの疾病対策として野菜の持っているカリウム、食物繊維、抗酸化ビタミンなどのより積極的な摂取のために「野菜350g摂取」が目標として導入されました。

手元に届いたJP press(ジャパンプレス)平成29年11月30日号)の記事をご紹介します。

長野県民の平均寿命は、男女ともここ10年近く継続して日本一です。そして識者は、長野県民の野菜摂取量は男性が379g、女性は365gと350gを大きく上回っていることが理由だと解説しております。しかし健康寿命では男性が6位、女性は17位です。同紙のレポーターはさらに注目すべきこととして、野菜摂取量が240gぐらいと全国で男女とも最下位の愛知県民は、健康寿命が男性は1位、女性は3位と述べています。(平成22年時点)

この報告から言えることは、野菜摂取量と平均寿命や健康寿命との間には関連性が少ないと考えてもよいでしょう。

長野県.諏訪市で、地域住民の健康に積極的に係わってきた鎌田實医師は、減塩運動と取り組んできました。その結果一時的ではありますが、高血圧が起因の疾病が減少し、平均寿命日本一に貢献したといわれています。

しかし野菜を350g食べようというキャンペーンにおいては、食べ方に問題があったのではという疑問を先述のレポーターは呈しています。

野菜を食べる際、塩、醤油、マヨネーズ、ドレッシング、味噌マヨネーズなどの使用が伴い、結果として長野県民の塩分摂取量は全国で2番目に多くなっています。因果関係があるといわれる脳血管疾患は全国で4位です。

また健康日本21では、野菜を350g摂ることとともに、牛乳などの乳製品を130g、豆類を100g摂ることも進めていますが、野菜以外はあまり知られていないのではないでしょうか。

本当に健康と野菜を1日に350g食べることに因果関係があるのか、エビデンスは?など次から次へと疑問が生じます。

メディアの発信する「〇✕健康法」の類であるとは考えたくもありません。しかし多くの市民が、食生活における野菜の在り方として、1日350g摂取をかたくなに信じているのも間違いのない事実と言えます。

地域住民と密着した指導で減塩運動を成功に導いたにもかかわらず、野菜摂取で塩分摂取量が元に戻ったのでは元の木阿弥であります。

健康には、栄養・運動・休養が欠かせないといわれています。この3要素を無視しての健康論を鵜呑みにするのはいかがなものでしょうか。