健康ニュース 5月15日号 納豆を食べるのは・・・
健康講演で和食について語るとき、時々納豆についても話すことがあります。その時「納豆はいつ食べますか?」という質問をしてみると、多くの方が「夕飯に食べます」と言われます。さらに質問を続け「子供のころはいつ食べていましたか?」と問うと「朝ご飯で食べていました」との解答が返ってきます。さらに「子どもの頃は朝食べていたのになぜ夕飯で食べるようになったのでしょうか?」と質問を続けると「今は朝ご飯にパンを食べますから納豆は合いません」と言われ、会場の方々も半数は同意のようです。残りの半数は「納豆の成分、ナットキナーゼが有効に作用するには夕飯時に食べるのが良いと聞いています」と口々に言われます。
納豆が有する酵素の一つ、ナットウキナーゼについて考え直してみます。
ナットウキナーゼはおよそ100年前に発見されましたが、研究が進んで注目を浴びるようになったのは、1980年代です。ある公立大学の栄養学科の某助教授(当時)が、ナットウキナーゼを研究の結果、血栓を溶かす作用があることを発表。血液をサラサラにすることが健康の大きな条件であることが認識し始められたころですので、一躍脚光を浴びました。これに便乗した業者が、ナットウキナーゼを商品化して数多の製品が巷にあふれるようになりました。
ここでナットウキナーゼの問題点、専門家が指摘する点などを整理してみました。
●ナットウキナーゼを構成する分子量は約31000ほどで、腸から吸収するためには10000以下に分解する必要があります。腸で分解吸収した後、再度ナットウキナーゼとして構築されるかどうかは全く分かりません。ということは納豆を食べたからと言って、血液をサラサラ状態にするということは立証されていません。
某教授の発表はビーカー試験でのことです。人体テストで証明されたわけではなかったのです。
さらにナットウキナーゼは酵素です。ナットウキナーゼに限らず酵素というものは、大体50度前後で作用が停止してしまいます。ご飯は盛り付け時には50度以上の温度です。そこに納豆をのせて食べてもナットウキナーゼは間違いなく効力を失っていることでしょう。
●ナットウキナーゼが効果を発揮するのは食後六~七時間後である、と言われています。
脳卒中や心筋梗塞の原因である血栓障害は早朝から昼前に多発しています。その対策として血栓を溶かすナットウキナーゼを夕飯に食べて、血栓対策と言っているのですが、結果は前述の通りです。
夕飯時に納豆を食べてはだめ!と言っているのではありません。血栓を溶かしてくれるという期待は、あまり意味がないと言っているのです。
「なぜ夕飯時に食べる方が増えたのでしょうか」ということを詰めていきますと、やはりメディアの影響力と言えます。TVの健康番組(と称される娯楽健康番組)で、納豆を朝食べるよりも夜食べたほうが血栓対策となる!と言い切っていたのです。さらに納豆をかき混ぜるとき、百回近く混ぜるともっとナットウキナーゼが増える、とも言っていたのですね。夕飯時に何と根気のいる食べ方をしているのでしょうか。実践している方には心よりご同情申し上げます。
一日のスタートを良くするには、朝食時にたんぱく質摂取が大切です。手軽にたんぱく質を摂れる納豆を食べていた先人に敬意を表します。