フジッコ「カスピ海乳酸菌の寿命延長メカニズム」解明

      執筆者:motoe

フジッコ(本社:神戸市中央区、代表取締役社長執行役員:福井正一)と大阪市立大学名誉教
授 西川禎一氏(現:帝塚山学院大学 人間科学部長)らの共同研究グループによる、「カスピ海乳酸菌」による線虫の寿命延伸に関する研究が、微生物学の専門誌「Microbiology Spectrum」に掲載された(オープンアクセス:https://doi.org/10.1128/spectrum.00454-21)。「カスピ海乳酸菌」は、ヨーロッパ東部の黒海とカスピ海に囲まれたコーカサス地方のジョージアを起源とする乳酸菌。この地域は長寿地域として知られており、100歳を超えるお年寄り「センチナリアン」が元気に暮らしているが、そのセンチナリアンが元気に暮らす秘訣のひとつがヨーグルトであると言われている。長寿食文化の研究が専門の家森幸男氏(現:武庫川女子大学国際健康開発研究所所長)が WHO の調査研究(CARDIAC Study)で現地を訪れた時にヨーグルトを持ち帰ったが、このヨーグルトを起源とするのが「カスピ海乳酸菌」(写真:自家製ヨーグルトを食べるジョージアの男性)。今回の研究では、「カスピ海乳酸菌」が生物の老化に与える影響を調べるため、老化研究のモデル動物である線虫に「カスピ海乳酸菌」を与えて生体に与える影響を確認。線虫は体長1mm、寿命3週間ほどの生物だが、ヒトとの相同性を示す遺伝子を多く持ち、消化器系などの器官構造があることから医学、薬学的な研究に用いられている。これまでに「カスピ海乳酸菌」による線虫の寿命延伸、自発運動性(体力)と化学走性(知覚神経機能)の老化抑制は確かめていたが、今回、本研究を論文にまとめるにあたり、特に寿命が延長するメカニズムを精査。その結果、「カスピ海乳酸菌」により酸化ストレスから体を守る生体防御能が向上すること、酸化ストレスや老化の指標と考えられている最終糖化産物(AGEs)の蓄積が抑制される可能性が示唆された。よって、「カスピ海乳酸菌」は線虫の生体防御能を高める事により老化を遅延させ、その結果寿命を延長させたと考えられる。また、線虫の自発運動性は健康寿命を、化学走性は知覚能力を反映すると考えられ、これらを向上させる「カスピ海乳酸菌」は寿命のみならず、健康寿命も延長できる可能性があると期待される。