<コンビ二創業戦記・別伝>「DCVS回想録」第33回
2017/01/24
『常勤監査役として』(1999~2004)(その3)
『監査役としての本社全体朝礼スピーチ』
当時ローソン本社では、毎週月曜日に全体朝礼が行われていたが、役員が交代でスピーチをしていたように記憶している。
おそらく現在も続いているであろう。
私も年に数回の割合で担当したと思う。手元にそのメモが幾つか残っているので、何を話したかをサマリーしてみたい。
既に10数年前のことなのだが、振り返って見て、スピーチの論点は、今でも、全く通用する気がするのは、手前みそであろうか。
<朝礼スピーチ・メモ>
ーー1999年(平成11年)7月20日・本社全体朝礼で監査役就任挨拶ーー
【 このたび常勤監査役に就任いたしました。
流通人生43年、これまでは経営者としての経験は幾らか積んできた積りですが、監査役の仕事は勿論初めてで、先日は、新任監査役セミナーに参加して、勉強して参りました。
最近は「企業統制、コーポレート・ガバナンス」が非常に注目されており、監査役の役割が商法上も極めて重要視されていることを、今更ながら痛感した次第です。
監査役の任務は、取締役の経営執行を、適法性と妥当性の観点から監査することでありますから、私は監査役の立場で、わが愛するローソンが健全に成長発展し、社会的使命を見事に果たせる企業となるように、努めたいと思います。
そのためには、監査役が、「憎まれ役」、「嫌われ役」にならざるを得ない面もあると、覚悟しております。
そこで今日は、早速ながら、経営執行に当たっておられる取締役の皆さんに、三つのお願いがあります。
一つは、取締役の皆さんは、全社的視野で経営的判断をして頂きたいということです。
それぞれ専任部門を担当しておられるわけですから、担当部門の責任を果たされることは当然のことでありますが、同時に常に、取締役としての全社的視野を持って欲しいということです。
ややもすれば、「部門管理者、部門の利益代表者的言動に陥りがちの傾向が無きにしも非ず」、だからです。
二つは、担当業務において、自らもっと勉強して、世界レベル、国内最高レベルのベスト・プラクティスを追究し続けて貰いたいということです。
三つは、明るく、笑顔のある組織運営をして頂きたいということです。
ローソンには、これだけの築き上げてきた規模、人材、イメージに加えて、多くの経験という高い潜在能力があるのに、活かしきれていないと思います。それぞれの立場での、一層のご努力をお願いしたいと思います。
新米の監査役が、「取締役の苦労も知らないで何を云うか」、と感じられるかもしれないが、これからも、「良い会社創り」のお手伝いとして、取締役への助言、勧告などの憎まれ役、嫌われ役を務めて参りますので、宜しくご協力をお願申し上げます。 】
ーー2000年(平成12年)3月21日・本社全体朝礼スピーチーー
【 ミレニアムブーム、Y2K問題で開けた2000年も、はや3ヶ月が過ぎようとしています。
この間、「失われた10年」といわれる日本経済の崩壊現象の余震が、未だに続いているようですが、日本再生の動きもまた、幾つが現れていると思います。
第一は、日本経済の再生の兆しが見えることです。その背景には、
①・金融パ二ックの不安を回避できそうなこと、
②・海外マネーの逆流で株式市場が回復してきたこと、
③・アジア経済の回復で貿易収支が拡大していること、
④・リストラ進行で企業業績が回復し、設備投資が始動し始めたこと、
⑤・IT革命による産業再生が本格化していること、などがあります
第二は、日本産業再生,企業競争力回復への動きが強まっていることです。具体的には、
①・金融、通信、放送、流通、自動車など、企業の合併・統合・再編などの動きの活発化
②・金融分野への新規参入の動きの強まり
③・Eビジネスの実践元年、などの動きであります。
第三は、日本社会の秩序インフラ再生の動きが見られることです。
ここ数年、警察、自衛隊の不祥事の多発、航空機、新幹線、地下鉄などの交通機関の事故、大病院の医療事故などが続き、日本の社会的秩序基盤の緩みが、厳しく指摘されています。
その背景にあるのは、旧態依然の組織体制と運営の仕組み、非近代的な官僚支配、無責任体制、組織の閉鎖性、隠蔽体質、虚偽発表、自己批判せず保身を図るという、官僚的発想であり、そこから脱却して、人権重視の市民社会とパブリックなルールを築き上げることが求められているということです。
このような社会の動きの中で、我々ローソンは、この2000年を飛躍の好機にしなければならないと思います。
ローソンは、創業25周年・上場に加えて、三菱商事を初めとする、丸紅、任天堂などとの戦略提携を契機として、この2000年を歴史に残る年としなければならないと思います。
そのために必要なことは、全員が闘志を漲らせると共に、一人ひとりの社員が自らの能力を一層高めることです。
少数精鋭でなく、多数精鋭を目指すことです。
一人ひとりが、自分の得意技を磨き、持ち味、個性に磨きを掛けることです。
自ら学び、考え、判断し、行動できる人材、その分野で、余人をもって代え難いといわれる人材を目指して欲しい。
個々のヒラメキやアイデアを、どんどん発信し、光り輝く自分を目指して貰いたいと思います。
21世紀を『ローソンの時代』に仕上げるのは、そういう皆さんである、と申し上げてスピーチを終ります。 】
ーー2001年(平成13年)7月23日ローソン本社全体朝礼スピーチーー
【 記録的な猛暑にもかかわらず、日本経済は今冷え切っているように見えます。
次の日曜日29日は、21世紀の日本再生をかけての参院選挙がありますが、日本の明日を選択する選挙ですから、是非とも投票したいと考えています。
今日は、最近マスコミを賑わせている「コンビ二神話崩壊論」、あるいは、「コンビ二成長限界説」について、私見を申し述べたい。
これには、大別すると、『市場飽和説』、『消費構造変化説』、『業態ライフサイクル説』、の三つがあると思います。
これらの論調は、概して現象論であり、本質論ではありません。
コンビ二は進化し続ける業態であり、現在は進化の第二ステージに入ったところです。
第一ステージのコンビ二は、成熟しつつあるともいえますが、第二ステージのコンビ二は、漸く進化し始めたところであります。
その意味で、「崩壊論」や「限界論」は、部分的には当たっている面もあるが、全体として妥当ではないと思います。
何故ならば、コンビ二は業態成立の過程で、三つの進化のエンジン(進化の原動力・メカニズム)を内臓し、磨き上げているからです。
その第一のエンジンは、「生活革命のエンジン」です。
人々の日々の暮らしの便利性を追究し続けることで、何時でも、何処でも、何でも、誰でも、必要なものを手軽に手にい入れることができる生活インフラを築いてきました。
時間革命、立地革命、商品革命、顧客革命を通じて、生活革命を実現してきたのであります。
そして、今や「買い物サポート」から、「生活サポート」へさらに「生き方サポート」へと、生活者の日々の暮らしのあらゆる局面へと、便利性のフロンティアは無限に広がりつつあると思います。
第二のエンジンは、「システム革命のエンジン」です。
コンビ二は生活革命を追究する中で、商流革命、情流革命、物流革命、さらには生産革命を推進し、日本の流通革命を先導して来ました。
それによって、単品大量システムから多品種少量システムへ、そして今、適品適量適度システムの実現に挑戦しつつあるといえます。
IT革命の急速な進展、デジタル技術とインターネットが結び付き、さらにモバイルやブロードバンド、ワイヤレス技術などの活用によって、今まで、出来なかったことや、夢に過ぎないと思われていたことが、実現する可能性が高まっています。
第三は、「マネジメント革命のエンジン」です。
「生活革命のエンジン」も、「システム革命のエンジン」も、これを生かすも殺すも、マネジメントにかかっております。
マネジメントの基本的な役割は、共通の目標、共通の価値観、適切な組織と適切な訓練・研鑽によって、事業に携わる人々が、共同で成果を実現できるようにすることであります。
そして、コンビ二のマネジメントの特質は、フランチャイズ・ビジネス展開にあります。
「企業家育成」、「ザーとジーとの共生」、「役割分担共同事業」というフランチャイズの原点を、今一度しっかりと確認することが、非常に大切であると考えます。
以上の三つのエンジンを活かし続ける限り、コンビ二の進化が続くことを、確信を持って申し上げ、今日のスピーチと致します。 】
『監査役OB会など』
私が監査役を退任してから既に9年余を経過しているのだが、半年に一度の割合で、現役監査役とOB監査役との交流が、今でも続いている。
一つは、上半期に一度、監査役(現役・OB)を中心に、『青空会』と称するゴルフ会が続いていること、
<青空会の皆さんと>
二つは、毎年末、『拡大監査役会』と称して、ローソンの現状に付いての現役・OB相互による忌憚のない情報交換会が続いていることである。
<拡大監査役会議事次第>
実はこの二つの会合は共に、私たちの現役当時に、児島さんの発案で始まったのであるが、その後10年以上も有意義に引継がれているもので、とても嬉しいことである。
本号で、監査役の項を終わり、次号からは、これまでに書き残したエピソードなどを思い起こしてみたいと思う。
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