月桂冠「麹菌が作る成分にがん細胞を死滅させる作用」

      執筆者:motoe

月桂冠(社長:大倉治彦、本社:京都市伏見区)総合研究所は、甲南学園甲南大学(学長:中井伊都子、兵庫県神戸市)の川内敬子准教授(甲南大学フロンティアサイエンス学部)との共同研究により、日本酒などの製造に用いられる麹菌が作る成分・デフェリフェリクリシン(以下、Dfcy)に、ヒト由来のがん細胞を死滅させる作用があることを発見。研究成果を、「麹菌産生物質デフェリフェリクリシンの抗がん作用」と題して、日本薬学会第142年会(会期2022年3月25日~28日)で発表する。鉄はがん細胞の増殖に深くかかわることが知られており、鉄と結合する一部の物質には抗がん作用のあることが知られているが、麹菌が作る成分Dfcyは、鉄と結合する性質があり、米麹やそれを原料とする日本酒などに含まれている。そこで、甲南大学が抗がん作用の検証を、月桂冠が麹菌によるDfcyの製造および供給を担い、Dfcyの抗がん作用について検証試験を行った。その結果、ヒト乳がん由来細胞をDfcyで処理することにより細胞の死滅が確認され、抗がん作用があることが判明。死滅する前の細胞には多数の空胞が形成されており、マーカータンパク質を用いて詳細に検証したところ、細胞内で不要になった成分が除去されるオートファジー性細胞死によるものであることが示され、肺がん細胞や大腸がん細胞に対しても同様の死滅と空胞形成があったことから、他の多くのがん細胞腫でも同様の抗がん作用が期待される。この成果は、日本酒、甘酒、みそなどの発酵食品に含まれるDfcyの抗がん作用を明らかにした画期的なもので、また、今回明らかになったがん細胞の死滅機構は、新規抗がん剤の研究開発につながる成果であると考えられるという。